ゝ･陸 ページ23
「私は、まだまだだよ。もっと強くならなきゃいけない」
「……特級を一人で祓えれば上々でしょう、何故そんなに頑張るんですか」
「何故って……、……なんでだろう？」
はた、と気づいて首を傾げる。強くなることについて、誰もそれを止めなかった。五歳にして特級を祓えれば上々、というその言葉は確かにその通りなのだった。
いや、理由はある。推しを守るためとか死にたくないからとか、うーんでも理由として弱い！しかも前者は死んでも口に出せない。八割の理由がそれだがそれを言ったら多分すごい顔をされる。
あとは、そうだなあ。強いて言うなら。
「強い呪術師じゃないと、私が扇一の家に生まれた意味が無いから、かなあ」
曰く、1000年前より私は呪われ続けてきた。
でも、それって愛じゃない？
オタクである私、様々な二次創作に触れてきた私の価値観は、自分でも分かるがこの通りひんまがっていた。
産まれてくるかも分からない呪いの子のために、せっせと強い呪いを作り続けたのってそれ、とんでもねえプレゼントじゃない？なら期待に応えるのが弔いになるってもんでしょう。それはそれとして実家はクソなので滅べばいいと思うがな。
うん、最もな理由だ。我ながら素晴らしい。
「家を継ぐためですか」
「ううん、ちょっと違う」
「というと」
「私が滅ぼすの」
ナナミン、のみならず。その場の誰もが目を見開いた。
だろうな、誰にも言ってない。これは私が、ずっと思っていたことだ。
「私が継いで、私が滅ぼすの。子供は産まないし、頭の凝り固まった奴は追い出すの」
「……滅ぼす、って」
「うん、だってこのままあのうちに居たらお母様が可哀想だもん。あ、人殺しはしないよ？お母様泣いちゃうから」
扇一家の解体。私自身に課したミッションのうちの一つだ。
あまりにもクソすぎる家なので、私の代で終わりにしようと思ったのである。お母さんがあまりにも哀れだ。家のことは忘れてどこかで生きているであろう父と余生を穏やかに送って欲しい。
私自身長生きするつもりは無いし、推しを全員救えたらあとはどうなったってどうでもいい。
「これ内緒ね。うちの人にバレたら、連れ戻されちゃうかもしれないから」
数ヶ月経ってすっかり柔らかくなった表情筋を、ふんだんに使って私は笑った。ノリで重苦しい話をしてしまった。少しでも子供らしく見えていればいいが。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 706人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ニノ崎(プロフ) - めっちゃ面白いです，，，好みドストライクです！これからも応援しております。後，伍話目の美美美ー美・美ー美美ってまさか某マルハーゲ帝国()のパロですか() (2021年3月2日 18時) (
レス) id: 159ece0998 (このIDを非表示/違反報告)
ぱるさん(プロフ) - みもなるーと。さん» 丁寧なご感想たいへん嬉しいです、ありがとうございます！燕は扇一の自立に必要な犠牲だったのでちょっと……ね……これから扇一夢主、ガンガン男前に磨きがかかって参りますので何卒お楽しみ頂ければ幸いです！ (2021年2月26日 19時) (レス) id: 96fc810d06 (このIDを非表示/違反報告)
みもなるーと。(プロフ) - なんだかクソデカ感情を向けてしまった（？）夢主に恋してしまうかと思ってしまいましたね… 最近は天候が崩れやすいのでお体に気をつけて無理せず頑張ったくださいチュチュ… (2021年2月26日 17時) (レス) id: d641c5035a (このIDを非表示/違反報告)
みもなるーと。(プロフ) - な、なんだこの小説は今まで生きてきた私へのご褒美かご褒美なのか。夢主のどこか達観した想像力などに惹かれました。燕さん私の推しだったのに食べちゃいましたね…やはり愛とは、呪いなのかしらと再認識できた気がします。素晴らしい小説をありがとうございます。 (2021年2月26日 17時) (レス) id: d641c5035a (このIDを非表示/違反報告)
ぱるさん(プロフ) - 43yomi1さん» ありがとうございます〜〜！！！更新頑張ります！！ (2021年2月26日 16時) (レス) id: 96fc810d06 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
