毒にも薬にも【短編集】 (ページ3)

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晶哉「…ラストライブの、あのー、俺らの卒業ライブのセトリ決めたん？」

A「んー、、まだ。
ギターの子とキーボの子の意見割れちゃって。」

晶哉「毎回Aちゃんとこ決めるん時間かかるよな」

A「音楽性の違いやわ」

晶哉「なんなんそれ笑」

A「ほんまやって！笑

学生バンドやから解散せずに今日まで続いとるけど、インディーズやろうが、メジャーやろうがプロ目指したら一発で解散やわ。

好きな系統全然ちゃうもん、あの子ら。」

生ぬるくなった、塩辛いポテトを摘む。

下衆な笑いを浮かべた先輩はもうとっくに就職して、

初々しい後輩が、同学年に酒を勧められてるのを
2人して苦笑いしながら眺めた。

特有の空気感には慣れないまま、

そして俺は一歩踏み出せないまま、

炭酸の抜けかけたビールの苦味だけに慣れてしまった、4年目。

もう、ほぼ最後のサークル呑み。

Aちゃんは、社会人になったら
サシで飲んでくれるんやろうか。

それとも、就職先の飲み会で
俺みたいなん見つけて2人で話すんやろうか。

…嫌や、そんなん。

晶哉「……抜け出さへん？」

A「…なんなん急に。酔い回るには早いで？」

晶哉「流さんといて、本気やから。」

戸惑ったまま、頷いたAちゃんの手を取って立ち上がる。

相変わらずニヤニヤと笑ってる幹事に“抜けるで”
って言葉代わりに会釈。

…もうなんとでも言え。