73話 ページ1
初めて会ったときからおかしいと思っていた。
何故キシャルと呼ばれる姉の仇を知っていたのか。
何故彼は私達を知っているような口振りで接してくるのか。
アンシャルという男が教えたのだろうと思ったのだが何か違う気がする。
考えても答えが出ないもどかしさを飲み込んで消え行く意識を覚醒させる。
体を起こそうとすると何かが上に乗っていて動けない。
先程の攻撃で飛ばされた瓦礫が下半身に乗っている。幸運にも足は折れていないようだが痛い。動いてみると足が引っ掛かって抜け出せそうで抜け出せない。
もがいていると近くで炎の猛る音や刃物が当たる音が聞こえてきた。
キィン、と甲高い音が鳴る。富受だ。
先程のもぬけの殻とは大違いで勇ましく立ち向かっている。
彼だけに良いところを持っていかれるのが嫌なので早く抜け出そうとすると歪みとやらが此方に目をつけてきた。
終わった、そう瞬間に理解した。
目を閉じて迫り来る終わりを待った。
死ぬのなら姉さんや織田作のところに行きたいと願っていると
──まだ終わってないだろ──
織田作に怒られた気がして目を開く。
歪みの攻撃が目前に来たところで
「治!!!」
血相を変えて富受が此方に飛んできた。
私のことを名前で呼ぶ人はあの人しかいない。
無意識に手を伸ばすと衝撃が走った。
砂煙に咳き込み薄目を開くと私は富受に抱き締められた状態で富受の下敷きになるようにして倒れていた。
先程の衝撃は瓦礫を吹き飛ばし、私を抱えて飛び伏せた時のものだ。
背中や腰が少し痛むが命に別状はない。
頭を覆うように庇われていたので富受がどのような状態なのか見ることができない。
暫く動かない富受を退かそうと動くと私は驚きのあまり動けなくなった。
上に乗ってた富受は私から慌てて飛び退き、私の顔を見て怪我が無いことを熱心に調べる。それから無事と判断したのか安堵の息をもらした。
フリーズした意識をどうにかして動かす。
震える手で富受の───否、彼女の手を掴む。
泣きそうな声でその人の名前を呼ぶ。
太「A…姉、さん…?」
すると温かくて昔より小さなった女の人らしい手が私の手を優しく握り返してきた。
そして申し訳なさそうにはにかんで
「遅くなってごめんね、治。」
私は現状を忘れて姉さんに抱きついた。
この温もりを二度と失わないように。
強く抱き締めた。
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甘栗(プロフ) - ウナさん» どんどん中也さんの活躍増やしていこうと思ってます!ドキドキしてもらえるように頑張ります! (2019年4月4日 19時) (レス) id: 8ba49da6fd (このIDを非表示/違反報告)
ウナ - うわあ、もうかっこよすぎです、中也!!やばいですよもう!凄いです! (2019年4月4日 18時) (レス) id: 0bc8f10023 (このIDを非表示/違反報告)
甘栗(プロフ) - チョコ味の白兎さん» 確かに口調が敦君みたいですね(笑)色々な関係が動く予定なので楽しみしててください! (2019年3月30日 20時) (レス) id: 8ba49da6fd (このIDを非表示/違反報告)
甘栗(プロフ) - 雪宮暦さん» カッコいい中也を目指してるのでそう言って貰えて嬉しいです! (2019年3月30日 20時) (レス) id: 8ba49da6fd (このIDを非表示/違反報告)
チョコ味の白兎 - 最後のセリフが敦くんっぽい!ここからの展開が楽しみ! (2019年3月30日 17時) (レス) id: 8cc010c4ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:甘栗 | 作成日時:2019年2月28日 16時