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4'話 ページ22

待ち合わせの場所に着くと兄がもう待っていた

「ごめん、待った?」

小走りで駆け寄ると兄は笑ってイヤホンを外した

兄「そんなに待ってないよ。行こうか」

これで彼女がいない理由がわからない
兄に着いていって本屋を巡った

趣のある古本屋は本の独特な臭いでワクワクした
兄が教材として使う資料を探している間に私は店内を見て回る

「お、羅生門」

芥川君じゃんなんて思って本を捲る
純文学難しい
暫く捲っていたがわからなくて諦めた
遺伝子とかの本の方がまだ解る
本棚に本を戻して移動する

ふと目についた本があった
只、何と無くだったけど知っているような気がした

太宰治の狂言の神

その本は太宰の鎌倉山での自 殺未遂体験を素材とした作品だった

純文学なんてわからないし文系科目は壊滅的な私にとってその本も知らないはずだ
なのに

「知っているような気がする」

パラパラと捲ってみたがわからない
気のせいだったと思い込み兄の元に向かう
すると兄は会計を済ましていた

兄「なんかあったかい?」

「否、何もないや」

お前は理系脳だからなぁと笑われ頭を撫でられた
そのまま本屋を出て兄は私を甘味処に連れていってくれた

私がケーキを頬張ると兄はニコニコ笑いながら先程買った本を読み出した
ブックカバーがついているのでなんの本かはわからないが兄の事だから純文学だろう

私がケーキを食べ終わると兄は本を閉じて会計に向かった
ゴチになります

甘いものを食べたので散歩しながら帰ろうと兄を誘い遠回りして帰る
休日なので大きな通りは親子連れが多かった
私の町には大きな川が流れていて川縁に桜並木がある
今は桜は終わっているのので少し寂しい
川を渡る大きな橋を並んで歩く
治がいたら良い川だって飛び降りるのかな
ふふっと笑うと不思議に思った
私は太宰さんを治って呼ばない
なのにどうして治って言ったのだろうか

立ち止まった私に兄は心配そうにして

兄「A、大丈夫か?気分でも悪い?」

私は顔を横にふって

「大丈夫」

と答えた
本当は大丈夫なんかじゃない
引っ掛かるんだ
朝からずっと
何を忘れている?

兄は私が問題ないとわかったようでほっとした表情を見せた

兄「帰ろう、A」

帰るって何処に?

兄「本当にどうしたんだ?早く安全な家に帰ろう」

兄が私の手を引いた
そうか、このままついていけば私は





 ───────姉さん!─────────



私は


私は兄の手を振りほどいた

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甘栗(プロフ) - クレハさん» 私の趣味丸出しです笑。そう言ってもらえて嬉しいです。頑張りますね! (2019年2月26日 15時) (レス) id: 8ba49da6fd (このIDを非表示/違反報告)
クレハ - すごく面白いです!私の好みドンピシャです。更新待ってます。 (2019年2月25日 23時) (レス) id: ddd19fa939 (このIDを非表示/違反報告)
甘栗(プロフ) - 飛鳥さん» いえいえ!お役に立てて良かったです! (2019年2月23日 12時) (レス) id: 8ba49da6fd (このIDを非表示/違反報告)
飛鳥 - 甘栗さん» 教えてくださり、有難うございました! (2019年2月23日 9時) (レス) id: e183043180 (このIDを非表示/違反報告)
甘栗(プロフ) - 真昼ノ夜さん» そう言ってもらえて嬉しいです!頑張ります!! (2019年2月22日 18時) (レス) id: 8ba49da6fd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:甘栗 | 作成日時:2019年2月4日 19時

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