【ツイステ】覆水不返

第42話 ページ44

「！……よろしく」


マレウスさんは私の行動に驚いたような表情をしていたが、気持ちにに応えるようにぎゅっと握り返してくれた。


「顔合わせが済んで何よりです！朝早くから寮長の皆さんに集まってもらったのは、彼女という存在を知っておいてもらうためですからね。Aさんの存在は特例中の特例です。私も男子校に女子が送られてくるなんてことは初めての経験ですので……全員がそうとは言いませんが、女性のAさんがいると知れば、彼女に対して良からぬことを企むものや、邪な気持ちで近づく者もいるでしょう。教師陣だけでできることも限られています。ですので、寮長である皆さんの協力を得られればと思っています。いいですね？」


学園長先生の言葉に何人かから「はい」という返事が聞こえてきた。もちろん乗り気じゃない様子で、返事をしていない人もいたけど。

学園長先生は私の方へと向き直る。仮面から覗く黄色い目と視線がパチリと交わった。


「Aさん、貴方は当校初めての女子生徒です。確実に全校生徒の注目を浴びる。先程寮長の皆さんにも協力を求めましたが、それは教師陣には立場というものがあるからです。場合によっては表立って動けないこともあるでしょう。その反面、寮長である彼らは各寮を束ねる寮長であり実力者です。ですので、困ったときには彼らを頼って下さい。あ、もちろんAさんもできる限りの自衛はしてくださいね？」


『…………はい』


不安はあるし頼れる人も限られている。
鏡の言葉の意味も、魔力の話も、この世界のこともわからない。



ただ、この世界で生き抜くためにはこの学園で生活するしか術はないということだけはわかる。



学園長の話をよそに、頭の中ではそんなことを悶々と考えていた。



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