【ツイステ】覆水不返

第37話 ページ39

目を見開く。呼吸を忘れる。

7人の石像には見覚えがあったから。





ハートのついたステッキを持ったふくよかな女王





左目に傷がある痩躯なライオン





タコの下半身を持つふくよかな体形の女性





長身痩躯でコブラを扮した杖を持った男性





毒林檎を持った美しい女王





炎の髪を持つ死者の国の王





宝玉のついた杖を持ち頭に２本のツノがある魔女







『……なんで、』


世界で最も有名なネズミを生み出した会社の映画に登場するヴィランズたちだと、一瞬で理解した。何がどこでどう繋がっているのかよくわからない。魔法がある時点で異世界だとは認識していたけれど……。

私は、この7人の存在を知っている。

同時に状況も理解した。理解してしまった(・・・・・・)。


「Aさん？」


並んだ石像から目が離せない。



私はただ、異世界に来たんじゃない。



2次元の世界に迷い込んでいる。


書物の中なのか、アニメの中なのかはわからない。わからないけど2次元の中だとしたら、多分決められたシナリオがあるはず。
私の立ち位置はどこなのだろう……気づいたことで先への不安ばかりがせめぎあう。
私は確実に“異分子”だ。原作にいないはずの人間なのだ。だとしたら辿り着く結末は……


「Aさん！！」


『！！！』


学園長先生の声にハッとする。
学園長先生は心配そうに私の顔を覗き込んでいた。


「Aさんが何を考え込んでいるかは知りませんが、この学園にいる間の衣食住は私が保証します。今は人を待たせているので先を急ぎますよ」


そう言って学園長先生は、私の手首を掴むとスタスタ歩き出した。

この人もシナリオの中のキャラクターなのだろうか？
ヴィランがモチーフの寮がある学校の校長先生……そう考えるだけで、私の胃はキリキリと痛むのだった。


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