第21話 ページ23
「え、と……では、中へどうぞ」
「いえ、こんな時間ですので長居をするつもりはありません。私は学園長に頼まれて来ただけですので。学園長からあなたへ届け物です」
「……届け物ですか?」
そういうとアズールさんは私の背中をぐいと押して、ユウさんの前に立たせる。
『ひっ……』
「彼女はAAさんです。先程、異世界からやってきたそうで、闇の鏡によると本人に魔力はなく器しか持っていないとのこと。闇の鏡は寮を決められないと判断したため、“学園長推薦枠”としてAさんを受け入れると学園長は仰っていました。今現在は魔力がないので、オンボロ寮の生徒として寮を振り分ける、とのことです。生活用品は学園長が用意をすると言っていましたよ。僕は寮までの案内を仰せつかっただけですので、監督生である貴方に彼女をお預けします」
「え?ちょ、」
有無を言わさない圧力で一方的に話すアズールさんに戸惑う。ユウさんも同じようで、キョトン、とした顔でアズールさんを見つめていた。振り返り視界に入ったのはニコニコと綺麗な笑顔で笑うアズールさんだった。聡い人なので、私とユウさんが混乱していることには気がついているだろう。
アズールさんは話終えると今度は私の手を取り、にこりと微笑んだ。
……顔はいいんだよなぁ、顔は。眼鏡と口元の黒子が妖艶さを醸し出している。
俗にいうイケメン言うやつだ。今までの感じから性格がイケメンとは言い難いが。
「Aさん、もし何か困ったことがあれば、オクタヴィネル寮にあるモストロ・ラウンジへいらしてくださいね。僕があなたの力になりますので」
『……は、い』
「では、失礼します」
「え、ちょっと、アズール先輩?!」
踵を返し去っていくアズールさん。私はその行動の速さに呆気にとられ動けなかった。
門の近くで待機していたフロイドさんが、こちらに向かってブンブンと手を振っている。私が小さく振り返すと彼は満足そうに体の向きを変え、アズールさんを追いかけていった。行動の幼さが可愛らしい人だ。
その横にいたジェイドさんは私とフロイドさんとのやり取りをニコニコ眺め、フロイドさんとのやり取りを見届けるとペコリと小さくお辞儀をして去っていった。
小さくなっていく3人をぼんやりと見送る。
「とりあえず中に入りませんか?何がなんだかわからないので、Aさんの話を聞きたいです」
隣に立っていたユウさんは困ったようにヘラリと笑った。
.
195人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
小崎相良(プロフ) - 錨絡さん» 台詞の中に違和感なく潜んでるのがいいですよね。そんな要素を探すのもツイステの楽しみですし、ツイステから入った方に、そういうささやかな楽しさを伝えていきたいです(o´艸`) (2020年8月9日 15時) (レス) id: 5536140bcb (このIDを非表示/違反報告)
錨絡(プロフ) - 小崎相良さん» アリス、というかディズニー全般歌が多いから、余計に勘ぐってしまう…好きだなぁやっぱり (2020年8月9日 15時) (レス) id: b3cb4375d4 (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 錨絡さん» コメントありがとうございます。そうなんですよね!細かいところに原作の要素が散りばめられてて、気づくとあっ!ってなります。 (2020年8月9日 15時) (レス) id: 5536140bcb (このIDを非表示/違反報告)
錨絡(プロフ) - 春の庭、春の庭…アリス、……ゴールデンアフタヌーンを入れ込んでたのか…さすが制作陣。拘るなぁ…とても好き (2020年8月9日 9時) (レス) id: b3cb4375d4 (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - マチさん» コメントありがとうございます!お気に入りいただけてとても嬉しいです!不定期更新ではありますが、これからもよろしくお願いいたします。 (2020年7月28日 0時) (レス) id: 5536140bcb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:小崎相良 | 作成日時:2020年6月6日 10時