【明治東亰恋伽】もしもがあるなら 参

【置屋に帰る ３】 ページ38

「おつかれさん」



『！』



「よし、よし」と言いながら、川上さんはわたしの頭を撫でた。
気持ちが緩み、涙が溢れ出す。

この時代に来て一番近い距離で支えてくれた川上さん。たくさん迷惑と心配をかけてきたのに、私は彼に肝心なことは伝えていない。川上さんが尋ねて来ないのをいいことに、ずっとずっと隠してきた。隠し事だらけの私を受け入れてくれて、何も言わずに大切にしてくれる。


未来から来たこと。


もう元の時代には帰れないこと。


川上さんは受け入れてくれるかなとか、拒絶されたらどうしようとか思うところはたくさんある。でも、川上さんにこれ以上隠し事をしていたくない。拒絶されたら、受け入れてもらえなかったら次の場所を探せばいいんだ。怖気ついては行けない。
良々と頭を撫でている川上さんの左手の動きを両手で止める。



『……あの、川上さん』



「おう？なんだよ、改まって」



『聞いて欲しい話があるんです』



そう言って私は口を開いた。
私が今まで体験してきた突飛な出来事を順を追いながら川上さんに伝える。川上さんは真剣な表情で私の話を聞いてくれた。




両親を亡くして、一人途方に暮れたこと。




ナイルさんに出会ったこと。




気がついたら自分のいた時代から明治時代に来ていて、明治時代は過去の年号であること。




チャーリーという方に会い、過去に来た原因がナイルさんにあると聞いたこと。








勿論、

鹿鳴館でナイルさんに会って元の時代に返すつもりはないと言われたことも。


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