Another:藤田 ページ3
扉を開けた先は一般的な玄関だった。
玄関があり、奥には部屋が見える。灯はついておらず、窓から入る月明かりがこの部屋の光源だった。敷き詰められた畳と円卓、
「……」
「……掛け軸?」
「どうかしたのか」
泉が掛け軸へと駆け寄る。虎の描かれた床につくほどの大きな掛け軸。部屋の大きさに合っていない。
「「……」」
何を思ったのか、泉が掛け軸をめくった。
そこには少し小さな戸がある。何故こんなところにあるのか。隠すような位置だ。
……この奥に何かがあると確信する。
「行くぞ」
「、……」
泉は何も言わなかった。戸を見つめたまま、返事の変わりに首を縦に振る。緑色の双眸が睨むように戸を見つめていた。
俺は後から建物に入ってくるであろう警察官にわかるよう掛け軸を外す。
すると戸の隙間からぼんやりと明かりが漏れていることに気がついた。
この奥にはやはり何かある。
別の出口がある可能性を考え、音を立てないようにそっと戸を開く。
視界に入ったのはオレンジ色の淡い光。
そして、服を脱がされて泣きじゃくるAの姿だった。
「貴様ら!!!」
声を上げ、サーベルを抜いて駆け出す。
頭で考えるよりも早く、体が動いていた。
男たちは状況を理解したのか臨戦態勢を取ってきた。
「不法侵入は困るねぇ!おまわりさんよぉ」
「ここは俺たちの“家”だぜ?」
「勝手に入ってくるのはどうなのかなぁ??」
「……その娘には捜索願が出ている」
実力の差は見えていた。この男たちは戦闘に慣れていない。
多くの戦を生き抜いてきた俺にとっては赤子の手を捻るように簡単だった。
取り囲んでいた3人の男たちを気絶させ、Aと向き合う泉のもとへ向かう。様子がおかしいことにはすぐ気がついた。泉とAの間に距離がある。
「どうした」
「……拒絶されるんだ」
「拒絶?」
「人に近づかれることを恐れてる。枷だけでも外したいんだけど」
「……」
ガタガタと体を震わせるのが目に見える。腕は後ろ手に縛られ、足は枷で柱と括り付けられていた。着崩れ、帯も解かれている状態で体を守るように小さく縮めている。その姿は痛々しい。
俺が近づくことすらも恐怖の対象になりそうだ。この場に女がいればまた話が変わるだろうが、いないので頼ることはできない。
俺にはどうしていいのかわからず、焦りだけが募った。
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小崎相良(プロフ) - Koma?さん» お返事遅くなりすみません!ありがとうございます! (2022年1月22日 18時) (レス) id: 6783c5a7bd (このIDを非表示/違反報告)
Koma?(プロフ) - ちょーぜつ面白いですね!最近めいこい見始めて最初に出会った作品がこれで良かったです! (2022年1月16日 11時) (レス) id: 286de14237 (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 二酸化酸素さん» ありがとうございます!嬉しいです! (2021年7月21日 22時) (レス) id: b1e523f101 (このIDを非表示/違反報告)
二酸化酸素(プロフ) - 本当にゲームをしてるような気分になりました (2021年7月19日 1時) (レス) id: f6be19e74d (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 鈴華さん» 楽しんでいただけたなら幸いです(o´艸`)!こちらこそ閲覧頂きまして、ありがとうございました! (2020年8月4日 23時) (レス) id: 5536140bcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小崎相良 | 作成日時:2020年2月23日 10時