第廿捌話＿本性 ページ42
笑っているのに不気味さしか感じられないその笑顔に恐怖を感じる。
「その通りだよ。俺は大工じゃねぇぜ。あんたほどの頭ならこの状況で他にも察しはついてんだろ」
「……彼女を離せ」
一段と低い岩崎さんの声が辺りに響く。その声を聞いても太郎さんは表情をかえない。見上げると、あいもかわらず笑顔とは言えないような表情で笑っている。
「やなこった。これが俺たちの仕事だからな！こういう素直で無垢な嬢ちゃんは助かるよ」
「知ってるか？こういう真っ白な娘の方が高く売れるんだぜ」
『？！』
私たちを取り囲むように、数人の男が現れた。ニヤニヤと笑う男たちの表情を見て、身体に鳥肌が立つ。この状況は太郎さんによって仕組まれて、整えられたものであると瞬時に理解した。
「まあ、あんたほどの金持ちならそんなことは気にする必要はないだろうがよぉ……」
『いわさ……んぐっ』
「Aさん！」
状況を変えられないかともがいてみたが変えられるはずはない。それどころか、口に猿轡をかまされてしまい言葉が出せなくなる。岩崎さんが手を伸ばすより早く体を引かれ、行手を阻むようにガタイの良い男が前に立った。岩崎さんとの距離が開く。
「もう少しで簡単に連れて行けたのによぉ……邪魔しやがって」
「やめろ！連れて行くな！っどけ！」
「どけと言われて退く馬鹿はいねェよ！なあ？岩崎サーン」
「うぐっ……」
男の拳が岩崎さんの腹部を捉える。岩崎さんはその場にお腹を押さえながら蹲った。距離が開いていても、苦しそうな表情をしているのが見える。
『んー！んんんー！！』
「まぁ目的地はもうすぐだからいいさ！あんたは来るのが遅すぎたな！」
歩かないようにしても引きずられてしまい、その場に止まることはできなかった。
うずくまっている岩崎さんが心配ではあったが、自分にはどうすることもできない。涙があふれそうになるのを堪え足に力を入れる。
抵抗しても引きずられるのはわかっているのだから。体勢的にも力でもの状況は変えられない。それなら、少しでも痕跡を残すことと時間をかけさせる。これが今の私にできることだ。
誰かがこの異変に気づいてくれることを願って、私は引き摺り跡を地面に付け続けた。
遠くで男たちの下品な笑い声が響いていた。
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小崎相良(プロフ) - 閃光のまりあんぬさん» コメントありがとうございます！不定期な更新ですみません(>_<)藤田さんカッコいいですよね！少し不器用な優しさにキュンときます(o´艸`) (2020年2月20日 9時) (
レス) id: b334f4b37a (このIDを非表示/違反報告)
閃光のまりあんぬ - とっても面白いです！！ 更新頑張ってください！ 楽しみにしてます☆ ちなみに私は藤田さんファンです…！ (2020年2月19日 23時) (レス) id: 68c769878e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小崎相良 | 作成日時：2019年8月13日 19時
