第捌話_ツンデレ ページ13
「でもあんた、気をつけなよ」
『え?』
「ナイルってやつのことがあるから探し回るなとは言わないけど……最近、この辺りで人買いが出たらしいから」
鏡花くんが眉間に深くしわを寄せて小声で呟く。彼の言葉を聞いて不安が押し寄せた。
現代の日本では聞かない言葉だ。
『人買い、ですか?』
「あんたそんなことも知らないの?攫われて、売られるんだよ。売られて……、その…………遊女とかにされるんだ」
『…………』
鏡花くんの話を聞いて私は言葉を失う。
「今回は未遂に終わって狙われた娘は無事だったらしいけど、その犯人はまだお縄になってないみたいだから」
そう言って大きなため息をついた鏡花くん。その様子を見つめていると、ピタリと目が合った。
「ま、まぁ、あんたみたいな鈍臭い子、人買いも願い下げだと思うけどね。とりあえず、暗くなってからは1人で行動しない方がいいと思うよ」
『……わかりました』
「じゃ、僕はもう帰るから」
鏡花くんは、そう言うとスタスタと帰って行った。
ぶっきらぼうで言い方は少しきついけど、こちらを気遣い、心配してくれていることがよくわかる。
『優しい人ばかりだな……』
この時代で出会う人たちは。そう思う。
「おや、A!そろそろお座敷の時間だよ!準備はどうしたんだい?」
『すみません!直ぐにして参ります!』
慌てて身支度を整える。
ナイルさんがいることがわかって、先が見えて心にゆとりができた今。
人が優しい明治時代も悪くない、そう思った。
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小崎相良(プロフ) - 閃光のまりあんぬさん» コメントありがとうございます!不定期な更新ですみません(>_<)藤田さんカッコいいですよね!少し不器用な優しさにキュンときます(o´艸`) (2020年2月20日 9時) (レス) id: b334f4b37a (このIDを非表示/違反報告)
閃光のまりあんぬ - とっても面白いです!! 更新頑張ってください! 楽しみにしてます☆ ちなみに私は藤田さんファンです…! (2020年2月19日 23時) (レス) id: 68c769878e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小崎相良 | 作成日時:2019年8月13日 19時