【明治東亰恋伽】もしもがあるなら 弐

Another:藤田 ページ7

骨董品店へと歩き出した小泉の腕を引き、引き止める。この男が何を考えているのか、相変わらずわからない。
しかし、骨董品が病気の者に渡す手土産ではないことは明らかだ。熱を出しているときに骨董品を渡されて “早く元気になって下さい” と言われたところで元気は出ない。
……いや、小泉なら出るかもしれないが。
少なくとも、世間一般の者たちは出ないだろうことは簡単に想像がつく。
腕を引かれた小泉は「藤田サン？！何をするんですか！」と抗議をしている。



「……病人に渡すなら果物だろう。弱っている体でも消化しやすく、口当たりが良い」



……断じて骨董品ではない。



「果物ですか？普通ですねぇ」



「……普通でいいだろう。女子は甘いものが好きだと聞く」



「わかりました！では買いに行きましょう！」



そう言って俺の手を引く小泉。
手を引きながらずんずん進んでいく。






果物を手に入れた小泉は、なぜかその果物を俺に渡して歩き出す。制止の言葉をかけるが普段の如く聞く耳は持たず、何かを1人で叫んでいる。
大きなため息をつき、気持ちは呆れつつも、果物を持って小泉の後を追った。



「此処です！」



小泉が止まったのは置屋の前だった。

案内されてたどり着いた部屋で、Aはすやすやと眠っていた。



「おや、眠っていらっしゃいますねぇ……」



「病人なのだから当たり前だろう」



見た限りでは苦しそうにしたり息が荒い様子はない。症状も落ち着いているのだろう。
しかし、不思議な存在だ。

頼まれてナイルとやらについて調べたあと、俺は個人的に娘についても調べた。
……結論から言うと、情報は出てこなかった。この辺りでは見かけない顔だ。いつ越してきたのだろうか。人の噂、情報はすぐに回るので入ってきやすいのだが……聞かない。
魂依でもあるので、今後も注意が必要だろう。

協力する約束をしているが油断はできない。
そう思いながら眠る娘の姿を見守った。



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