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30(Kiside) ページ30

「俺がやった。」





真っ直ぐに玉に向けられた藤ヶ谷の声が、静かな森にやけに響いた





「ガヤさん…」





きっと皆分かってた

でも、口にするのが怖かった





だって…

あの光景は、思い出しても震えが来るほど恐ろしい光景

今回は幸い、俺達と島人達の間を塞ぐものでしかなかったけれど…

一歩間違えれば、確実にあの木は島人達の上に降りかかっていた

あの火だって…

島人の体に少しでも触れていたら、怪我人どころか死人だって出ていたかもしれないんだ

あんな事が出来るのは、不思議な力を持つ藤ヶ谷だけ

皆もしかして…と思いながらも、どこかで偶然起こった出来事だ、って思いたかったんだと思う





「本当に…藤ヶ谷がやったのか?」





俺の問い掛けに藤ヶ谷は、確実に首を縦に振った





「最初は偶然だった。ただ…皆を助けたいって思ったら、大きな木が倒れて来て…」

「なら…」

「でも、その後に起こった事は全て俺の意思だよ。倒れた木を飛び越えて来るあいつらを、絶対こちらに来させたくなかった。」

「あの火は…?」

「多分…俺の怒りが、火を起こさせたんだと思う…」





藤ヶ谷の言葉に、背筋が凍る気がした

藤ヶ谷の感情が、人を死に至らしめる力に変わるかもしれない

一瞬…藤ヶ谷に恐怖を感じてしまった





「藤ヶ谷…」

「ごめん…皆を怖がらせるような事して…」





俯く藤ヶ谷

その表情は、苦痛に歪んでいて…

それを見た瞬間、さっき感じた恐怖はすぐに消えてしまった

どんなに力を手にしても、藤ヶ谷の心が優しさを忘れない限り大丈夫だって…





「大丈夫だよ。あれは俺達を守る為にガヤさんがした事でしょう?実際、あれが無ければ、俺達皆殺されてたかもしれない。」





千賀の言葉に藤ヶ谷が顔を上げる





「ありがと…千賀…」

「でもね…もう…あの力は使わないで?俺達は…ガヤさんにあんな事して欲しくない…」





泣きそうになりながらも懸命に藤ヶ谷に訴える千賀の頭を、玉がそっと撫でた





「そうだよ。こんなこと、ガヤに言うのは間違いかもしれないけど…。この力は危険だよ。一歩間違えれば、人の命にかかわる力になる。」





藤ヶ谷の手をそっと掌で包み込み、玉は心配で堪らないという表情で藤ヶ谷を見つめた







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作者名:MISA | 作成日時:2015年10月1日 17時

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