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実際には、彼自身ももっと深いところまできちんと自覚している。
その本質は献身的、などではなく。ただ取り付く島もなく重荷を抱えて右往左往と不安げな顔をして彷徨うそれらの手に左手を重ね、背に負った荷を代わりに負ってやろうと右手をかける。その際に申し訳無さげにする気力もなく倒れ込んでくるやつれた身体の重さが、嬉しく感じ。そのまま一人で立てるまで抱き留め続け、やっと離したと思えば、身体にべっとりとまとわりつき剥がれない依存を言い訳にまたのうのうと猫撫で声で懐に飛び込んでくるそれらの愚かさが、愛おしく感じる。良くも悪くも上から目線に、彼は他人を見ている。
だが、そんな思惑の見え透いた面では、取り付くどころか島とすら思ってはもらえぬだろうから。穏和とも艶美とも言わしめるあでやかな笑みで、その救いようのない莫迦を待ち望んでいる、という訳だ。
彼の記憶力は並大抵の人間とは比べ物にならない程に良く、そしてその持続時間もとてつもなく長い。故にその力を活かし、彼は少しずつおまえの情報を集め、記憶していく。あるときはおまえの近辺を漁ったり、あるときはおまえ自身からさり気なく聞き出したり、あるときはおまえを観察したり。その方法に特にこだわりはないが、彼としては一番嬉しいのは“おまえ自身から話してもらう”ことらしい。おまえからの信頼を得られていると、そう実感できるからだという。
好きな食べ物は何か、と聞かれたとき。少し前までは彼は「味噌汁かねぇ」と少し眉間にしわを寄せながら答えていた。幼い頃、母国の名字を捨て、迷いなく和名に改名する程までに日本が大好きだった両親が丹精を込めてつくってくれていた優しくうっすらとしたあの味が、確かに好きだった記憶はあるのだが。それがどんなふうだったかは、魔法界で食してきた数々で忘れてしまったようだ。作ってやると喜ぶ……やも、しれない。
今はその記憶が更に曖昧になってしまっている為、「わからんなぁ、ここの飯はなぁんでも美味いもんなぁ！おまえの好きなの教えてくれたら、
家事やら雑用やら、そこらのスキルは一通りある。それを活かして、おまえの役に立とうとしているよう。また、細かいところまで気も回る為、同僚が疲れた様子だったり、後輩が困っていたりすれば、即座にフォローに回る。そんな姿勢から、基本は周りからも有能だと好評。
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