先輩の秘密 ページ3
「適当に座って。」
え
え？
私、なんで和泉先輩の家に来てるの！？
いやいやいや、ちゃんと思い出そう
先輩が辞表出したの知って
会えなくなるくらいならって
告白して
あのとき
「……へ？」
「あー…論より証拠。ってことで、うち来てくれればわかるから。」
ん？
あの人告白にはっきり無理って言ったよ…？
振ったのに家って何！？
とりあえず部屋の中を見渡してみる
広いし、ものは多いが、至って普通のマンションの一室
特に変わったところは見られない
「久遠、紅茶と珈琲、どっちが」
「先輩！」
先輩の言葉を塞ぐように
私が急に振り向いたからか、目を見開いて1歩退く
あ、その表情もかっこいい
じゃなくて！
「あ、の…さっきの」
「君誰？兄ちゃんの彼女？」
「え、兄ちゃん彼女いたん！？」
青みがかった黒髪の少年とさらに小さな橙がかった茶髪の少年が私の顔を覗き込んでいた
青い方の子は首から携帯電話を下げていて
え、誰？
兄ちゃん、ってことは、弟？
え、先輩弟いたの！？
「彼女じゃなくて、後輩。お前ら、自己紹介。」
先輩が男の子達の背中を押す
「和泉心。三男、小3。」
「同じく章！四男で、小学1年！」
心君はつまらなそうに、章君は元気に自己紹介をしてくれた
三男とか四男ってことは、四人兄弟…？
「え、っと…はじめまして。私、久遠Aっていいます。和泉先輩の後輩です」
視点を合わせこちらからも軽く自己紹介をする
「ふーん…兄ちゃん、今日、なーくんがチビ達の迎え行って買い物してくるって。」
「Aさんと、外ででも…ゆっくり話してくればええんやない？」
「……ん？」
気だるそうに頭を掻く和泉先輩と、弟君達を見比べる
チビ達ってことは、もっと兄弟がいる、ってことで…
いや、なんでそんなに神対応なの君達
お兄ちゃんが家に女の人連れ込むのが日常なの？
え？
「いや、いい。お前らのいる前で話するから。」
食卓の椅子に座るように促される
目の前に珈琲が置かれ、向かい側の椅子に和泉先輩が腰掛ける
その後ろに弟君達が興味深そうにひっつく
「…久遠」
「は、はい！」
「家事、得意って言ってたよな」
「えっと、はい。料理好きですし、掃除とか片付けとかも好きです！」
「……俺のために、なんでもできる？」
その質問の意図が理解出来なかった
が、嘘はつけない
「なんでもします！」
先輩が、ふわりと、優しく微笑んだ
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