桜色の幽霊 三 ページ5
真夜中、私と赤松さんは、中学校の校門前にいた。
「どこから入るんですか……？」
「来て」
そう言い、私の手を引いて校舎裏に周る赤松さんはここに来た事がないはずなのに、妙に土地勘があるようだ。
「ここのフェンスを抜けたら、簡単に校庭に入れるでしょ？」
赤松さんが指した、校舎を囲むフェンスが、鋭い刃物で切り裂かれたように、縦に私達の足下までぱっくりと開いていた。
「赤松さんが開けたんですか……？」
「まさか。俺はここに来た事ないからね。多分、俺達より先に忍び込んだ人がいたんだよ」
来た事ないなら何で穴が開いてるのを知ってたんですか、と呆れ半分、嫌な予感が半分。
「真白ちゃん一人で行くでしょ？」
「……言うと思いましたけど、一緒に……」
「行かないよ。君一人で行って来て」
一人で幽霊に会いに行けと、この人は笑顔でとんでもない事を言うが、私に拒否権がないのは知っているので、私は一人で校庭に向かった。
「……あ」
校庭の隅にある、大きな桜の木。
夜でも変わらず私の方に大量の花弁を散らすその大木の根元に、ぼんやりとした白い影が見えた。
「……う〜……うぅ〜……」
夜の校庭に響き渡る、すすり泣くような女の声。私は恐る恐る、その女の人に近づいていった。
「うぅ……ううぅ〜……」
白い着物を着た彼女に、私はそっと声をかけた。
「……あ、あの」
「……うぅ……」
「大丈夫ですか……？」
気づけば私の聞いた、大木くんと同じ事を言っていた。これでは話と同じ展開になる、と焦るが、もう遅い。
「うぅ……うぅぅ……！！」
その瞬間、彼女は赤く充血した目で私を睨んだ。
「うぅ……だ……大丈夫……！？ ……大丈夫なわけ……ないでしょおぉぉおお！！」
「うわっ……！！」
急にビュッと強い風が吹きつけ、尻餅をついた私に、女の人はぐっと顔を近づけた。
「貴方に私の何が分かるの？」
低く、静かな声で、女の人は呟くように言った。泣き腫らした目で私をじっと見つめる。
「貴方に私の何が分かるのよおぉぉ！！」
ビュッ！！ と再び強く吹いたのは、桜混じりの冷たく身を切るような夜風。女の人は青白い腕を高く振り上げた。
「……っ！！」
女の人の長く鋭い爪が、私の鼻先を通り過ぎた。
「貴方には分からないのよ！！ この苦しみは、辛さは、私が味わった痛みなんて……！！」
もう片方の尖った爪先が、私に向かって勢い良く振り下ろされ、私がぎゅっと目を閉じた時――。
「そこまで」
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くろーさぎ(プロフ) - 造山監督帯( ⊇･ω･⊇)~ｷﾉｺ~ﾉｺﾉｺ~さん» コメントありがとうございます！(≧∇≦) (2019年8月21日 7時) (
レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
造山監督帯( ⊇･ω･⊇)~ｷﾉｺ~ﾉｺﾉｺ~ - ((((；ﾟДﾟ))))))) (2019年8月21日 1時) (レス) id: e5491ec8cb (このIDを非表示/違反報告)
くろーさぎ(プロフ) - サルンラップさん» コメントありがとうございます！！咲良ちゃんは個人的にお気に入りですww閲覧ありがとうございました！！ (2019年7月29日 18時) (レス) id: 472ca3e356 (このIDを非表示/違反報告)
サルンラップ - すごい面白いです！咲良ちゃんなんか好きだなあw更新頑張ってください！ (2019年7月29日 18時) (レス) id: 306dfa2dd3 (このIDを非表示/違反報告)
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