美しき異常者たち【両角】 (ページ4)

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中区山ノ手の現場付近には、パトカー五台と警察官輸送車二台、鑑識班の車一台と覆面パトカーが五台駐車していた。

路地という路地には規制線が張られ、どこもかしこも警察官で溢れている。

真壁はブルーシートに覆われている船越家のぎりぎり近くに車を停めた。

降車した清田は、直ぐに向こうに自分たちが所属する捜査第一課強行犯三係の面々を発見した。

隣の時差集団は強行犯四係。

県警上層部はふたつの班を投入したようだ。

寒さ解消のため足踏みをしている今野班長に、真壁が近づいて尋ねた。

「奥村代理は？」

「まだ、現場から出てこないみたいですよ」

「来たか、真壁班長に清田部長」

所轄の刑事課と打ち合わせをしていた舟木中隊長が、ふたりを見つけて声をかけた。

「マルガイは？」( マルガイ…被害者を表す )

「えーと、現時点で分かってることはだなぁ… 」舟木はゆっくりと、太ったからだを揺すり、スーツの内側のポケットから手帳を出した。

「マルガイは四人… 」手帳を読むため、下を向いた。「船越宗之、五十四歳。妻、葉子、五十二歳。長男、貴之は二十五歳。長女の杏里は二十二歳。主人の宗之は経営コンサルタント会社社長。葉子は専業主婦。貴之は銀河銀行本店勤務。杏里は父親会社の社員」

「みんな、ご苦労さん」

大きな声が聞こえたので、その場にいた三係、四係の全員が振り向いた。

現場の検分を終えた奥村事件担当代理だ。長身で筋肉質、ハンサムな中年だが、今日は疲れきった顔だった。

「鑑識、もうちょい時間かかるってさ……寒いが待っててくれ」

「そりゃ、こんだけのヤマですから」真壁がみなを代理して答えた。