美しき異常者たち【両角】 (ページ3)

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ー清田 side ー

今まさに、眠りにつこうとした時だった、会社支給の携帯が鳴った。

「はい、清田です」

「明日って休みだったよなあ…お気の毒」真壁孝太班長の声だ。「今から部長のとこに寄るから用意しといて」

「なんかあったんすか」自分でも不機嫌な声が出た。

「中区で一家四人殺/し……船越さんて家だ。中隊長によると、ありえねえくらい酷い現状らしい」

「了解」

俺は携帯を切って、ベッドから起き上がった。

パジャマを脱ぎ、素早くワイシャツを着る。

ベッドサイドのテーブルに置かれた手塚治虫の大作、『アドルフに告ぐ』が目に入る。

四十年近く前の週刊文集掲載時のオリジナル版、それを復刻した大型本だった。

値段はなんと、二万二千円。

本当はカフェで珈琲でも飲みながらじっくり読みたい作品だが、三・四キロととても持ち運べる重さではない。

そこで明日は一日家に籠って、できる限り読み進めようと計画を立てていた。

ネクタイをしめながら、ちょっとため息を着く。

交番勤務のときならまだしも、刑事を目指し、希望通り神奈川県警捜査第一家に配属になったのだ。

準備が整って十分後、真壁班長からマンションの下に到着したとの電話を受けた。

清田のマンションは外廊下があるので、ドアを開けた途端、少しの寒さを感じた。