おんな将軍記~お母さま~ ページ6
その年の夏が来ても愛子女王の容体は思わしくないままだった。
愛子女王｢今は苦しいけど、じきにきっと治って.....そしたらたくさん抱いてあげるわ。Aちゃん。｣
A｢だぁ｣
家昌｢Aは偉いな。お母さまの言うことがわかるんだな。｣
よくAと家昌と愛子女王の三人で遊んでいた。
ある夜のことだった。
家昌はいつも通り愛子女王のもとへ向かった。
家昌｢御台よ、疲れておるのだろうAのことは乳母たちに任せて.....｣
愛子女王｢ごほごほ！.....!!!!!!!!｣
家昌｢！御台！御台!!!!!｣
愛子女王は激しい咳と喘ぎの末、大量の血を吐いたのだ。白い褥が赤く染まっていく。
家昌｢御殿医を呼べ！奥医師も！僧侶も！祈祷師もすべてだ！｣
愛子女王｢上様.....A.....｣
愛子女王は右の手で小さいAの手を、左の手で家昌の震える手を握り、次の間から僧侶たちの読経の声と祈祷師たちの祈祷が聞こえる中、愛子女王はふたりに弱々しく語りかけた。
愛子女王｢A.....お母さまはもうすぐ遠くからお迎えが来ます。本当は行きたくないけれど.....もうあなたを優しく抱きしめることも語りかけることもできない.....
でも悲しまないで。すがたかたちはなくなってもお母さまの心は、ずっとあなたの傍にあるから、いつも傍で見守っているわ。
A、生まれてきてくれてありがとう。お母さまの人生でのいちばんの幸せはあなたに会えたことよ。それをどうか忘れないで.....｣
Aは黙って聞いていた。
愛子女王｢家昌さま、いままでありがとう。私、あなたがいたからどんなにつらいときも幸せでいられた.....私の幸せは本当はAが生まれたことと、あなたと結ばれたことよ。愛されて幸せだったわ。ありがとう。｣
家昌｢愛子！愛子！俺も幸せだった！お前と結ばれて.....Aが生まれて.....愛子、愛してるからどうか.....逝かないでくれ.....｣
暗い部屋には薄く儚げな燭台の灯りがゆらゆらとゆらめいているだけだった。
家昌にはそれが愛子女王のいのちを暗示するように思えて、家昌は愛子に必死で訴えた。
その夜、愛子女王は愛する旦那さまと愛娘に看取られながら静かに息を引き取った。
家昌は次の間に聞こえるともしらず、泣いた。涙はとめどなく溢れた。
愛子女王が息を引き取ったその瞬間、Aも声を上げて泣き出した。僅か六ヶ月の赤子に母の死などわかるはずもないだろうに。幼子は何を感じたのか。泣き出した。
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牡丹(プロフ) - そぐむさん» ありがとうございます。とても嬉しいです。小説の方もご愛読ありがとうございます。これからも更新いたしますので何卒よろしくお願いいたします。 (2018年11月15日 17時) (
レス) id: 008b18c312 (このIDを非表示/違反報告)
そぐむ(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいています！合格おめでとうございます！！ (2018年11月15日 14時) (レス) id: 3753eef71c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：牡丹 | 作成日時：2018年10月22日 22時
