随想録 ページ34
土方side
俺はふとそんな昔のことを思い出した。
上様と出会って約十年。その間には本当に色々あった。
しかし、その中で俺も上様も成長していったように思える。
十年前、将棋をしたとき上様に言われた言葉、
『手を抜いてはいけませんよ』
あれ以来、俺は本当に何事にも手を抜かなくなった。
仕事も部下の教育も。
だが、一つだけちがうのは、夜、上様を抱くときだ。
あれだけは手加減をしないのではなく、手加減ができないのだ
先代の厳徳院様は俺に仰った。
家昌「将軍の正室は京の五摂家か宮家かどちらかからしか向かえられない。だから君は.....」
それから間もなく厳徳院様は亡くなり.....
将軍の座は十一歳のA姫が継いだ。
史上類を見ない、おんな将軍の誕生によって江戸城大奥は一新された。
そして俺は亡き厳徳院様のご遺言通り大奥総取締、上様の側室となった。
そんな昔のことを思い出し、中奥を歩いていると見慣れた人影があった。
緋のあざやかな打ち掛けに頭は前髪を垂らし、髷は稚児髷のような形である。頭飾り一色がきらきらとひかっている。
紛れもない、その人は上様であった。
俺はその人に駆け寄ろうとしてやっぱりやめ、道を引き返していった。
天上にはまだ陽が輝いていた。
随想録 おわり
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牡丹(プロフ) - そぐむさん» ありがとうございます。とても嬉しいです。小説の方もご愛読ありがとうございます。これからも更新いたしますので何卒よろしくお願いいたします。 (2018年11月15日 17時) (レス) id: 008b18c312 (このIDを非表示/違反報告)
そぐむ(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいています!合格おめでとうございます!! (2018年11月15日 14時) (レス) id: 3753eef71c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:牡丹 | 作成日時:2018年10月22日 22時