おしのびでお城下ー肆ー ページ18
本屋さんを後にした私たちはふたりでのんびり歩いていた。
鶴姫｢おじょうかは楽しいところですね、お母さま。｣
A｢そうですね。｣
ほんとうに。どこもかしこも賑わっていて、人が多すぎてこまるときもあるけれど、とても楽しい。
楽しくて平和でのんびりとした人たちを見ていると私は将軍として誇らしくも嬉しい気持ちになった。
まぁ、普段は保科の叔母上さまたちに助けられてばかりだが。
いけない。今日は政務のことも将軍であることも忘れて思いっきり楽しもうと思っていたのに、ついつい思い出してしまった。
しかし気を取り直して辺りを見渡すとなにやら薄暗い建物が目に付いた。
私は恐る恐るそこへ入った。
がららと無機質な音をたて、扉が開く、
医師｢お嬢さん、どうしたんだい。こんなところに。｣
中はやはり薄暗く、唸り声も聞こえた。
A｢あの.....ここは.....｣
医師｢療養所だよ.....｣
A｢療養所？｣
医師｢そうさね。お嬢さんどこか悪いのかね？｣
あ、この人はお城の御殿医と似たような職種の人か。
A｢いえ.....私はその.....あの！江戸の療養所ってみんなこんな感じなのですか？｣
医師｢こんな感じって.....まぁね。お嬢さん、良家の姫さんぽいから知らないだろうが、最近の療養所はもっぱらこんなだよ。こっちもどうにかならないもんかと.....｣
A｢.....そんな.....｣
たしかにそこは、いい環境とは言えなかった。中は薄暗く、湿っていて、患者たちはうめき声をあげていた。
私の心に微妙な翳を落とした。
鶴姫に見せるんじゃなかった。
私はそこを急いで後にした。
鶴姫を抱えて小走りでそこらから出たかった。
ここら一帯は寂れていて、破落戸(ゴロツキ)って言うのかな？そんなのが沢山いたのだ。
しかし、私はまともに外を歩くのは初めてであるし、ましてや歩くということ自体に慣れていない。その上、鶴姫を抱えて小走りになるのには限界だった。
破落戸1｢お嬢さん、一緒に遊ばねぇ？｣
破落戸2｢アンタ、いいとこのお嬢さんだろ？｣
破落戸3｢抱えてんの妹チャン？妹チャンも一緒に遊ばねぇ？｣
A｢あの！私は.....！｣
どうしよう.....
恐い人たちに囲まれた。
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牡丹(プロフ) - そぐむさん» ありがとうございます。とても嬉しいです。小説の方もご愛読ありがとうございます。これからも更新いたしますので何卒よろしくお願いいたします。 (2018年11月15日 17時) (
レス) id: 008b18c312 (このIDを非表示/違反報告)
そぐむ(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいています！合格おめでとうございます！！ (2018年11月15日 14時) (レス) id: 3753eef71c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：牡丹 | 作成日時：2018年10月22日 22時
