○ 告白 ページ13
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俺たちの会話に、サッチの声がしない。
笑い声が、ひとつ少ない。
楽しいではなく、楽しかったと言う。
泣いているAの背中をさする手が、一人分。
そのどれもが、ただ悲しかった。
「A」
「なぁに？」
親指で涙を拭ってやって、そのまま正面からAの瞳を覗き込む。背中を撫でていた手で、サッチとお揃いの結婚指輪が嵌っている方の手を取った。
「これからもここにいてくれねえかい」
「え？」
「これからも俺と一緒にいてくれねえかい」
「マルコ……」
「子どもなんかいなくても、俺はお前のそばにいたいんだよい」
こんなにもボロボロに疲れたAをひとりにさせられなかった。いや、これから絶対に幸せになって欲しいと思うからこそ、そばにいたかった。
サッチの代わりにはならなくても、
生きている人の中でいちばん近くにいたかった。
これから先、Aが泣くのは俺の胸の中だけがいいし、この涙を拭うのも俺だけがいいし、いちばんたくさん太陽みたいな笑顔を見るのも、俺がよかった。
サッチのことをずっと想っていていいから、Aがひとりぼっちで寂しいと感じる瞬間を作りたくなかった。
Aを救ってやることも、立ち直らせることも、慰めることさえできなくても、ただそばにいて、美味しくない料理くらいは作ってやりたいから。
「お前をひとりにしたくないよい」
「……でも」
「俺の隣じゃダメかい？」
「ダメじゃないよ、」
「俺の見えるとこで、サッチを想っててくれねえかい」
「マルコ……」
Aは三人が並んだ写真に目を落として、随分と長い時間悩んでから、やっとゆっくり頷いた。俺の目を見て、ありがとうと笑ってくれた。
なにも恋人になろうと言っているわけではない。
サッチのことを忘れろと言っているわけでもない。
ただ、ひとりで泣かないでほしいだけだ。
サッチがいない心の穴は埋められなくとも、
ティーチにつけられた心の傷が癒せるように。
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作者名：ライ | 作成日時：2021年11月17日 13時
