検索窓
今日:11 hit、昨日:16 hit、合計:26,007 hit

高揚と緊張 ページ36

時は遡り




暗黒に包まれたヨコハマを一望出来る、この街で1番高い塔の最上階




妖しく笑う月を背に




椅子に座り、手を組んでいる男は沈黙を貫いている




その男を前に、普段は帽子によって殆ど見えない綺麗な橙色の髪を持つ男




わざわざ愛用の帽子を取っているのはこの組織の首領に対する絶対的な信頼と忠誠の証




「今日の報告は以上です









.








...それから、金儲家の件ですが」




「何かわかったかね」




執務室に鋭い緊張感が走る




「はい




首領の読み通り、ウチのシマを荒らしていたのは
金儲家でした




黒蜥蜴が捕まえた奴等が全て話しました」




首領であるこの男の表情は全く変わらない




その表情からは誰しも無しか感じられないだろう




「御苦労だったね




その件は君に任せるよ




中也君」




「はい」




名を呼ばれた男、中原中也は深く一礼すると部屋を出て行く




否、“正確には出て行こうとした”だ




扉に手を掛ける前に森鴎外が彼を引き止めた




「そういえば




君の部下に黒中A、という子がいたね」




中也はA、という名前に内心ドキッとするが振り返り何時も通りに接する




「いますが....」




森鴎外は少し考えてから、引き出しに手を掛け封筒を出した




中也は封筒に惹かれるように先程の立ち位置に戻る



「私も少し気になってね




金儲家と君の部下を少し調べてみることにしたのだが....



これを」




その言葉と共に出されたのは先程の封筒




促され、一言断ってから封筒に手を掛ける




中也の中では緊張と高揚が渦巻いていた




好きな相手を少しでも知ることが出来る高揚感と
未知を知ることへの恐怖や緊張




中也は意を決して封筒を開き、中身を確認する




文章に目を走らせ、読んでいく




然し、中也の目は紙の下にいくに連れ、大きく見開かれていく




1枚目を何とか読み切り、震える手で1枚目をめくる




中也は少しでもいいから彼女が笑っていた時を知りたいと思っていた




然し、彼のの願いを









現実は容赦なく消していく




2枚目には




『No.4444




推定齢 4




異能あり




44億




金儲様 落札』




という、淡々と書き上げられた報告書と




囚 人服を着て、足と手を鎖に繋がれ、耳に値札が付いたピンをはめ、痩せ細った少女の写真




「A」

終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)


←薄れていく中で



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.4/10 (22 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
71人がお気に入り
設定タグ:文スト , 中原中也 , 恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:クロス | 作成日時:2018年11月25日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。