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人間として ページ32

Aside




『私はもう、あなたのいいなりにはならない』




人生で初めて




否、1人の人間として初めて彼女に抵抗した




都合のいいオモチャでもなく、痛みを感じないロボットとしてでもなく









あの人に見合うようになりたいと思う1人の女として




鞭が飛んでくるか、暴言の嵐か




いずれか何かが来ると思った



殴られるかもしれないと思って、歯を食いしばって目を瞑った









ーしかし、いつまでたっても何も起こらなかった




彼女はずっと背を向けて、俯いているだけだった




2人の間に沈黙が流れる




まだ、彼女を直視できなかったから彼女の足元を見ていると




床が少し湿っていた




それどころか上から落ちる水滴は量を増していった




慌てて彼女を見ると肩を震わしている




泣いているのだ、彼女は




今までずっと、この人は感情なんてない悪魔だと思い続けていた




人の出来ることではないと




何度も彼女を恨み、呪った




今、私の目の前にいるのは間違いなく恨んできた彼女だ




しかし、その背中には私が知っている彼女の面影はなかった




肩を震わして泣いているのはあの金儲鬼魔で




人から流れるあの雫は確かに彼女のものだ




その時、私の心には確かに小さな喜びが広がっいた




『人は変われる』




いつか聞いたあの人の言葉




彼女は手を擦り合わせて




何度も、何度も「ごめんなさい、ごめんなさい」と言った

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作者名:クロス | 作成日時:2018年11月25日 2時

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