静寂 ページ17
太宰side
細い裏路地の奥に古ぼけた看板が出ている
昔、織田作が1度連れてきてくれたことがある店だ
全体的に木で作られている店内
静かなジャズ
年期の入ったカウンター
何処と無くあの店とに似ているこの店はあの時間を思い出させる
私が居て、織田作が来て安吾が来て・・・
3人で写真を撮った
目の前のカウンターで何時も通りのくだらない会話をしている男達が3人いる
包帯を巻いている男と赤い髪をした男と学者風の丸眼鏡をかけている男
包帯を巻いた男は楽しそうに話している
私は引き寄せられる様に其の席に座る
然し、もう先程迄の声は聞こえない
右を見ても左を見ても誰もいない
虚しさだけがこの空間を支配しているようだ
マスターに酒を頼んでからもう一度店内を見渡す
店に客はいないらしい
出てきた酒を手に取り、いろんな思考を巡らせていた時だった
カランカラン
客を知らせるベルが控え目に鳴る
入ってきたのは中也より少し小さい女の子だった
だか、其の服装は上から下まで黒しか見えない
この店に戸惑っていたというよりは珍しくいる私に驚いているのだろう
彼女はゆっくりと後ろを通り過ぎ、一番奥の席に座った
コートを脱がないなら其なりの理由があるのだろう
ああ、彼女と話してみたい
私は其の衝動を抑えきれずにグラスを持って席を立った
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作者名:クロス | 作成日時:2018年11月25日 2時