生きる理由は…… 【中原中也】 (ページ11)

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命令ページ11

Aside

自分から聞いてほしい事があると言ったのに私がお酒を頼んだ後、私達の間には沈黙が流れていた

抑、私はマフィアなのだから話せることはほんとドない

その上、私は余り人と話すことに慣れていない

趣味などもないので提供できる話題もない

そして、今更ながらに後悔しているのは言うまでもない

謝罪だけして、さっさと帰れば良かったのではないか

そんな事を悶々と考えていると頼んでいたお酒が目の前に来る

今日は何時もの地味な色のお酒ではなく、色鮮やかな色だ

この一杯を飲んだら話し掛けようと意気込んで、グラスに触れようとした時だった

「今日は何か良いことでもあったのかい？」

と、太宰さんが聞いてきた

言葉に詰まったが慎重に話すことにした

「えっと・・まぁ・・・憧れている上司に褒められたもので」

自分の声のトーンは余り嬉しくないのだろうかと思う程低かった

恐らく緊張しているのもあるだろうが、何て言うか少し心配しているんだろう

この前みたいに・・・・

「へぇ・・・君の上司ならよっぽど優秀な人なんだろうね」

太宰さんの声は相変わらず軽そうだが、何か不思議に思った

というよりは、違和感に近い

少しずつ何かを探っているような

んなことを考えているが、彼は呑気に話続けている

「私の顔に何かついているかい」

そこで、はっと我に返る

何をしてるんだ私は・・・

多分、此れはもう職業柄仕方ないことないことだろう

「いえ、只職業柄こう無意識で人を観察してしまうんですよ」

言い訳っぽくはないだろう

「へぇ・・・一体何の仕事をしているだい」

何故だろう

この言い方はあの人によく似てる

否、此れはあの人が仕事の時に部下に・・・

命令するときと同じ威圧感だ

聞いてるのではなく、《言え》と命令している

どうしよう・・・・・拒めない

この人は一般人だ

絶対に違う絶対に違う絶対に違う・・・・

そう暗示を掛けているのに嫌な汗が背中を伝う

傷に触って染みるがそんな事は考えていられい

「Aちゃん？」

そこでようやく今までの考えが途切れた

今の声は、先程までと同じ
優しい声だった

心配そうに顔を覗き込まれている

「すみません・・・・私は、会社に勤めています・・・小さな会社なので御存知無いかも知れませんね」