アモーレ、たまごたち！

［学級委員長委員会］ ページ19

「さーぶろうっ」

「その声やめろ」

五年ろ組の教室。私が雷蔵と話しているというのに、コイツ＿＿＿五年い組学級委員長の尾浜勘右衛門は空気を読まずに会話を遮った。

「委員会行くよ。早くしないと二人が来ちゃう」

「……わかった。」

じゃあまた後で。と雷蔵に声をかけると、彼はいつもの柔和な笑みを浮かべながら「いってらっしゃい」と返してくれた。はぁーっ！本当に男なんだろうか彼は。にしては可愛すぎないだろうか。

勘右衛門と並び、ほどほどに雑談を交えながら学級委員長委員会の活動する部屋へ歩いて行く。あの日、前の天女が去った日。正気に戻った俺達は今まで庄左ヱ門と彦四郎にしていた事を思い出し、二人の前から姿を消した。蹴って、叩いて、閉じ込めて。本当に酷いことをした。今更顔向けもできまい。謝りたい気持ちはある。それでも、きっと彼らは会いたくないと思うから……。

「ねぇ三郎。人の気配がしない？」

学級委員長の活動部屋。確かに戸の奥に三人ほどいる。二人は庄左ヱ門と彦四郎だ。こんなに早くに、どうして。

「天井裏から見ようか」

「そうだな」

廊下の天井板を開け、上がる。そのまま移動して部屋の上の天井板に開いた穴から部屋の様子を覗いた。

＿＿＿信じ難い光景が広がっている。


「このちょこれいとってお菓子美味しい……」

「うん！ほんとに……あ、こっちは何ですか？」

「それはグミだよ彦にゃん。不思議な食感がするんだけど、よく噛んでね！噛まないと詰まらせて死ぬから！」

「い、命懸けですね！？」

「庄ちゃんもどうぞっ！よく噛んで食べてね！」

「ありがとうございます」

天女もとい三好Aが、一年の学級委員長である彦四郎と庄左ヱ門に異国のお菓子を振舞っている。

「何あれ」

「さあ……？？」

複雑そうに顔を歪めた勘右衛門にそう返すと、彦四郎が眉を下げた。

「でも……こんなに美味しいお菓子、先輩方と食べれないなんて寂しいな……」

「「！」」

「あのお二人のことなんて気にしなくていいよ彦四郎。僕らがいない間、先輩方はどうせこうして二人でお菓子を食べていたに違いないんだから」

庄左ヱ門が放ったその言葉に、思わず「そんなことない！」と叫び出しそうになった。彼らの瞳が潤む。

「お二人に会えなくて僕らが寂しかったぶん、先輩方も寂しくなってしまえばいいんだ。」

カタン、と。

どちらともなく、勘右衛門と私は天井板を外してしまった。

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