アモーレ、たまごたち！

〃 ページ32

内容は細かく説明すると、こうだ。きりちゃんと怪士丸が委員会に入るところからスタートして、楽しかったこと、つらかったこと、おもしろかったこと、全部を詰め込んだ日記形式の物語。しかし終盤に行くにつれ、天女の話題も出していく。
……でも、傷をえぐるものでは無い。天女の妖術にかかった先輩たちを、彼らがどう思ったのか。そして、妖術が無くなったあとどう接したかったのか。それをしっかり書かせてもらった。

「妖術が解ければ、前の先輩に戻るはずだ。だから、大丈夫。そうしたらぜんぶ元通りだから」

セリフを読む久作の声が震えた。元通りになれなかったから、当時の思いを噛み締めているのだろうか。
つられるように、きりちゃんや怪士丸の声も震える。じわりと目元から滲み零れた涙を見て、ナレーション担当の私がもらい泣きしてしまいそうになる。

「そうですね、せんぱいがたは、やさしいから……」
「きっと、また、わらいあえるはず……っぅ……」

服に涙を染み込ませながら、二人が俯いたのを見て。たまらないと言うように長次が立ち上がって、一年生二人を抱きしめる。雷蔵はその後をのんびりと追って、久作の肩を優しく抱いた。

「すまなかった……なんと、謝れば良いのか……ずっと考えていた……。謝罪が遅れてしまって、すまない」

長次がゆったりと、言葉を選びながらそう声をかける。ダムが決壊したみたいに、下級生たちはワッと声を上げて大泣きした。長次の目にも水の膜がゆらゆらと揺れている。

泣きそうになるのを我慢して紙芝居を片付け、トントンと整理する。これには私の知らない図書委員会の思い出が詰まっている。それを私が読むというのは、不安があったけど。こうして上手くいってよかった。
安堵する私へ、雷蔵が「すごいね」と声をかけた。

「え？」

「僕や八左ヱ門はさ、こう……人を簡単に信じてしまうところがあるけど。他の三人は、本当はすごく警戒心が強いんだよ。そんな三人と打ち解けて、こうして僕らの問題も解決してくれて。

三好さんは凄いね。もしかしたら、本物の天女様かもしれないね？」

いたずらっぽく笑う彼は、久作を撫でながらひとりごとのようにそう零した。

「そう？雷蔵が言うならきっとそうかも！」

にぱ、と明るい笑顔で返すと、「あんまり調子に乗らないで」と言われてしまった。ッカー！まったくこの男は！とんでもなく可愛らしい顔で、辛辣なことを言ってくる！

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