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「あいつ！2組のばり可愛い子に呼び出されとったんやで！」
ケッ！と唾を吐いた大先生が、あの女男見る目ないでほんま！と吐き捨てる。
「あいつに告るなら俺やろがい！なぁ〜にが「しゃおくんっ！この後、時間ある…？ちょっと屋上まで来てほしいな♡きゅるん♡」やねん！」
ははは…と苦笑しながら聞いていたが、大先生の口から出た単語に心臓が嫌な音を立てた。
「待て、大先生、あいつ等…どこ行ったって？」
「あん？屋上だよ。お・く・じょ・う！お前らが昼にチョメチョメやっとった屋上や」
それを聞いた瞬間、乱暴に荷物を片手に持って踵を返した。
ぎょっと目をむくコネシマと大先生に振り返る余裕はない。
嫌な予感が当たっていたことに舌打ちをして、他人の目など気にせずに廊下を走る。
屋上への階段を上がり、踊り場に足を踏み出して、屋上まで残り数段。階段に居ないアイツの姿に、背中に変な汗が伝う。
踊り場からもう一歩踏み出そうとした瞬間、開け放たれた扉から、生ぬるい風が入ってきた。
シャオロン。ずっとずっと、好きだったんよ。
がつん。と、鈍器で殴られたような、そんな衝撃が俺を襲った。思わず一歩後ずさり、左手で胸元を抑える。呼吸が乱れる。心臓が張り裂けるように痛い。
軽い足音が出口に近づき、一瞬焦るが、「どこいくねん！」という声とともに、それも止まって、少し安心する。今、彼女が扉を開けて飛び出して来ようとも、重い足が地面に張り付いて動かないだろう。
アイツらの少し言い争う声が聞こえた後、彼女のすすり泣く声が聞こえる。
強がりなアイツは、俺以外の前で泣くことは滅多になかった。きっと、シャオロンの前で泣いたのだって初めてだろう。シャオロンが、そんなアイツを泣かせたという怒りと、嫉妬心が、俺の心にどろどろと流れ込む。暗く、重々しい感情が、俺の心を蝕んでいく。
気づけば、夕日の光が扉から差し込んでいた。踊り場に立つ俺は、手すりの影に被っていて、光の下には立っていない。
お前や。
俺が好きなんは、お前や。あほ。
夏風と共に、そんな言葉が、階段にこだまする。
長年こじらせたこの想いは、意気地なしの俺のせいで実ることはなかった。
「…ばぁか。俺の方が…もっと、」
なんて、今更遅すぎる。
影に立つ俺を、夕焼け色のスポットライトは照らさない。
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作者名：白詰クサ | 作成日時：2024年2月26日 23時
