追黒【文豪ストレイドッグス】 (ページ5)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:393 hit

黒ト歩ム-1 ページ5

気づけば俺の人生はずっとこの男と供に在った。

勿論、不本意乍ら、だが。

　奴は昔から生きる事にも、死ぬ事にも随分と無頓着な男だった。口を開けば死にたい、と言うのだ。

その理由は今も定かでは無い。

が、何となく察しはついた。

奴が時折浮かべる死神のような冷たい表情を、幾度も目にしていたからだ。

否、死神という比喩は正しく無いのかもしれない。玩具に飽きてしまった子供、と言うべきか。

だが、俺はあんな表情をする子供を見た事が無い。

道化を忘れた子供は、時折、そうして嗤うのだ。

俺は、其れがどうも気に食わなかった。

加えて性格も容姿も、あの嫌味な身長だって気に食わない。
まぁ、そんなことを言いだすとキリが無いのだが。それくらい俺は奴が嫌いだったし、奴も俺を嫌っていた。

何時も死ねばいいと口癖のように言っていた。

互いに死ね、なんてーー
毒づくことが出来たのは……
互いに死なないと確信していたからで。

確信と言う言葉すら甘く感じる程、絶対的に信用していた。

あんな奴がこうも容易く死ぬ筈はない、と。