令呪2 ページ3
とてもよくある話だが，大きな荷物を抱えた老人の手助けをした時，お礼にと図書館の合鍵を貰った。図書館といっても国や県が経営しているものではなく，ずっと昔に貸し出しを辞めてしまった私営の図書館だ。その図書館は山の上に立っていて，誰も使っていない割には綺麗に掃除されていた。
知っている本がないかと探している時，頭上から一冊の本が降ってきた。ゴッ，という鈍い音がして頭に痛みが走る。
雪音「痛っ⁉…何，この本？」
本の表紙には『陰陽師』とだけ書かれていて，作者名などは書かれていない。ページをめくってみると，普通の物語形式の本だった。
雪音「安倍晴明？蘆屋道満？って誰？架空の人物？」
魔術の歴史は学校で習ったが，こんな人物は習った覚えがない。
他の本棚も見てみたが，知っている題名の本はひとつもなかった。
雪音「とりあえず，この『陰陽師』読んでみたけど，文化が違いすぎてよくわからない…どこの国の本なんだろ…」
最後のページをめくると，古い紙切れが足元に落ちた。
雪音「詠唱文…」
知らない詠唱文を無闇に読んではならないと，学校で教わってはいたが，気がつけば無意識に言葉を紡いでいた。
雪音「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する。
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――！」
右腕の甲に鋭い痛みが走って部屋中に風が吹き荒れた。青白い光が満ちて，視界を遮断した。
？「お初お目に掛かります。拙僧、真名を蘆屋道満と申す法師にて陰陽師。クラスは、アルターエゴ。…はて？アルターエゴ…キャスターではなく？…さて、奇妙なこともあったものですねぇ。ともあれ、以後よろしくお願いいたします、マスター。」
ニヤリと笑う巨大な男はあまりにも奇抜な格好をしていたが，そんなことよりも私が驚いたのはこの男の名前だ。
雪音「蘆屋道満⁉」
さっき読んだ小説に出てきた陰陽師と呼ばれる術者，
道満「マスターは拙僧をご存知で？」
唖然とする雪音の手にはしっかりと3画の令呪が刻まれていた。
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黒薔薇の奏者(プロフ) - あずきバーさん» あずきバーさん，コメントありがとうございます。語彙力鍛えて書いていくのでこれからもよろしくお願いします！ (2020年12月30日 7時) (
レス) id: 085c5a58d3 (このIDを非表示/違反報告)
あずきバー - もう…好き(語彙力なくてごめんなさい！) (2020年12月29日 23時) (レス) id: fcf5e20872 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒薔薇の奏者 | 作成日時：2020年12月14日 19時
