16個 ページ16
『こーんばーんはー』
「おっ、Aや。お疲れさん」
『おっ、侑だ。お疲れ様』
本日も仕事帰り、おにぎり宮へ
角名くん居るかな、と思ったら今日は
侑がカウンター席に座って既におにぎりをもぐもぐしていた
侑の隣に座って店内を軽く見渡せば
私達から2席空けた所に居た銀髪の男性と一瞬目が合って、軽く会釈し合った
その方は
テーブルに肘をついて背中を丸くしている私とは対照的に
背筋をピンと伸ばしてお行儀良くおにぎりを頬張っている
いつものようにバイトの渡辺くんがオーダーを取ってくれて
空腹に耐えながら料理が来るのを待った
『…あれ!宮さん居る!こんばんは!』
「おー。こんばんは」
いつもならこの時間帯は休憩中なのに
厨房からぬっと出てきた宮さんを発見
嬉しくてニヤニヤ止まらない
「久しぶりに飼い主に会えた子犬みたいな反応しよるな」
尻尾と耳の幻覚が見えるわ、と呆れ気味な侑
『ぐへへ』
「どんだけ好きやねんほんまに」
『本当どうしてくれんの?めっちゃ好きなんだけど』
「なんでちょっとキレ気味やねん。っちゅーかそういう事は本人の方見て言えや」
『無理だよそんなっ、直接好きだなんてっ』
ついこないだ好きって言うのは控えるって
決めたばかりなのについ言ってしまったわ。ダメだこりゃ
「いつも嫌ってほど言うとるやんけ。…な?サム」
「…せやなぁ。まぁでも確かに、」
ふと声がしてそちらを向くと、カウンター内から身を乗り出し
肘をついて私を見下ろす宮さんが目の前に居た。
「せっかくなら、そーゆー事はこっち見て言うてや」
『えっ』
「えっ」
「最近は前ほど言うてけぇへんからついに諦めたんか思たわ」
『えっ』
「えっ」
また軽くあしらわれて終わる、と思っていた。
きっと侑も同じことを考えてただろう
まさかそんな風に返されるなんて…予想外過ぎた
「なんやねん2人してアホ面しよって」
『あ…あああ諦めてなんかいませんよ!!大好きですから!浮気なんてしませんから!宮さん一筋ですから!付き合いましょう!』
宮さんの方へずいっと身を乗り出した
彼もこちらに身を乗り出したままなので、その距離数cm
宮さんの硝子玉のような大きな瞳に
赤面して必死な私の顔が映っている
「…はあ。いつも通りやったわ……」
宮さんは、少し微笑んでくれたような気がした。
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作者名:OX | 作成日時:2021年8月27日 8時