わたしの祈り。 ページ14
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私は適当に作った夕食を食べていた。
どうやら、買いに行かなくても食料を調達してくれる者がいるらしい。フョードルは完璧で、抜かりない。
それとなく、ホーソーンさんを盗み見る。
彼は手を合わせ、何かを唱えていた。
先程からずっとそうだ。聞かなくても、彼が何をしているのかは容易に想像がつく。
祈りを捧げているのだ、“愛し君”に。
きっと、ホーソーンさんにとって、とても大切な人なのだと思う。食事を片付けてから、私は手を合わせた。見よう見まねでホーソーンさんのように祈る。
「……何をしているのですか」
ホーソーンさんに問われ、私は目を開ける。
彼は不思議そうに私を見ていた。
見られていたことに恥ずかしくなり、下を向く。
「祈って、いたのです。
ホーソーンさんの愛し君が一刻も早く復活するようにと」
「……貴女は、他に祈ることはないんですか」
「……ないです。もう、全部ないです」
私には、何一つない。
両親は死んだ。あれだけ優しくしてくれた安吾さんを突き離し、私には最早、復讐しか残っていなかった。ホーソーンさんが何か云いたげに私を見る。
携帯が鳴った。
この携帯はフョードルに連絡手段としてもらったものだ。よって、この電話はフョードルからしかかかってこない。
「……はい」
『今夜は綺麗な満月です。粛清の時間です』
「罪人は？」
フョードルが罪人の情報を語る。
私はそれを紙に書いていく。
『今夜は牧師殿も連れて行って差し上げなさい』
「……何故ですか」
『武装探偵社が来ます』
ブソウタンテイシャ。
自然と口許が緩んでいくのを感じる。
彼らは変わり果てた私を見てなんと云うだろうか？
あの時、警察を呼んで泉鏡花を引き渡してくれてさえいればこんなことにはならかったと自分達の愚行を悔いてくれるだろうか？
ああ、早く会いたい！！
『……ですから、絶対にホーソーンくんを連れて行ってください。貴女一人では彼らには敵いません』
フョードルの言葉に返事はせず、電話を切った。
メモをポケットに仕舞い、急いで準備をする。
「……どちらに行かれるので？」
「ちょっとそこまで」
これは私の問題。
私の都合でホーソーンさんの手を煩わせるわけにはいかない。私一人では武装探偵社には絶対に敵わない。それは百も承知している。
けれど、何より、“愛し君”という大切な存在がある彼を巻き込むことなんて出来るわけがなかった。
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