泉鏡花の被害者【文スト】 (ページ11)

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わたしの手紙。ページ11

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坂口安吾様へ

今までお世話になりました。

思えば、私はずっと貴方に甘えておりました。

両親の葬式で、笑顔を作っていた私に、泣いてもいいのですよと声をかけてくれたことは一生、忘れません。

貴方の云いつけを守らず、武装探偵社へ行ってしまいごめんなさい。

恐らく、これから私が行おうとしていることはあなたに多大なる迷惑をかけることになってしまうと思います。

申し訳ありません。本当に、申し訳ありません。

どこまでも恩を仇で返す女で、申し訳ありません。

ですが私には許せないのです。

罪を受けずに笑って生きている彼女が。

どうしても、どうしても、許せないのです。

ですからこの手で、すべての決着をつけようと思います。

父と、母を殺害したあの女に、鉄槌を下したいのです。

その為なら、悪魔に魂を売っても良い。

否、私はもう既に売ってしまいました。

出来ることなら、もし叶うのであれば

もう少し、あなたのお側にいたかった。

あなたのことを、お慕い申しておりました。

どうか睡眠を取って、体調にお気をつけて。

さようなら、どうかお元気で

清野A

ポタポタと涙が紙を濡らし、文字が滲んだ。
制服の袖で涙を拭い、紙を封筒に入れる。

この部屋とも、今日でさいご。

「準備は出来ましたか」

「……はい」

土足で部屋に踏み込んで来たフョードルを軽く睨みながらも、頷いた。手紙を机に置き、彼についていく。

マンションを出ると一台の車が停まっていた。
フョードルと共に、車に乗り込む。

「そろそろ武装探偵社が気づき始めた頃でしょうね。新たな隠れ家に向かいましょう。お別れは済んだのでしょう？」

「……はい」

「余計な感情は必要ありません。
あなたはただ、両親を殺害した憎き暗殺者についてだけ思っていれば良いのです」

フョードルの言葉に耳を傾けながら、窓の外を見つめる。見覚えのある人物が視界に入り、心臓が大きく脈打った。

「なに、あれ」

駄菓子屋では泉鏡花が、セーラー服の少女と楽しげに遊んでいた。なにあれ。なにあれ。なにあれ。なにあれ。なに、あれ。

「……？どうかされましたか？おや……」

異変に気づいたのか、フョードルは私の視線の先を辿り、そして笑った。

「な、んで……」

「……」

「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしどうして」

　どうしてそんなに楽しそうなの。

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