庇う貴方とわたし。 ページ5
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「返してよ、私の家族」
私は泉鏡花を見つめた。
睨むわけでも、微笑むわけでもなく、ただ無表情で見つめた。
隣の少年が庇うように泉鏡花の前に立つ。
「鏡花ちゃんは殺しを反省しているんだ……！」
「……殺しを反省しているから、加害者を許せ……と。大体、本当に反省しているのですか。反省しているのなら、何故遺族の元へ謝罪に来ないのですか」
本当に悔いているなら、遺族の元へ謝罪に来るはずなのだ。土下座し、一生十字架を背負っていきますと、許しを乞うべきなのだ。だが泉鏡花は謝罪にも来なかった。それが私にはあまりにも腹立たしかった。
「……それは」
返す言葉を失ったのか、白髪の少年が口を閉ざした。
「残念だけど、鏡花ちゃんの経歴は既に洗浄されたんだ。鏡花ちゃんを逮捕することはできない」
「私の両親を殺害したのに？」
包帯を巻いた男性はうんと笑った。
そうか、人殺しでも探偵社に入れ、何の咎めもなく笑って生きていけるのか。
35人殺していても。
私は学校も休みがちになり、精神科に通院し、まだあの時の悪夢に魘されているというのに。
「分かりました。
犯罪者を擁護する武装探偵社の皆様、さようなら」
私は一礼し、扉に向かう。
白髪の少年が私を睨んでいた。
余程、35人殺しを守りたいのね。
私は嘲笑の笑みを彼に向けた。
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「敦、何故睨んだ」
国木田さんが厳しい口調でそう云った。
「彼女は悪いことは何も云っていない。
……親を殺されたら、誰だってああなるだろう」
「そうかもしれないですけど……」
鏡花ちゃんが僕の服の袖をずっと握りしめていたから、守ろうと思って。
「流石は国木田くん。やけに庇うね」
「……彼女に“蒼の使徒”の面影を感じ……なんでもない」
「なるほど。佐々城さんを思い出してしまったと？」
「黙れ太宰」
国木田さんと太宰さんが再び云い合う。
まぁ正論なのは向こうだけどねえ、と乱歩さんは興味無さげに呟いた。
「乱歩さん……」
「だってどう考えてもそうじゃないか。
向こうは親を殺されてる。いくら鏡花ちゃんの経歴が洗われたからって彼女にとって親を殺した人はまちがいなく鏡花ちゃんなんだよ」
「……こりゃ不利だねェ」
与謝野さんが溜め息を吐いた。
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