少しの話 ページ3
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「A、可哀相だね」
別に同情が欲しいわけでは無かった
自分の家が他の家よりも少しズレた家族なのは分かっていたし、"少しのズレ"なんてこんな形じゃなくても起きるものだと思っているから
可哀相と言われるのも頼ってと言われるのも少しだけ辛かっただけ
私への可哀相は段々と色褪せ始めているときだった。
親友が学校を辞めた。
その子は私なんかよりもずっと凄い子で皆から神様のような扱いを受けていた
彼女が学校を辞めた翌日に私は彼女に一つだけ質問した。どうしても聞きたいことだったから
「どうして、辞めたの?」
「全部、キモイなって思ったの。毎日机に向かってるのも必死になって周りと競争して絵を描くのも…やっぱりお前には勝てないなんて言われるのも」
だから全部捨てちゃったとあっけらかんに彼女は言った。
皆から慕われているのに、部活で一番優秀なのに彼女はそれを全部棄てたのだ
「Aも辞めればいいよ。あんな奴らと残りの二年間生活するって考えると辛くない?」
「…」
「…ごめん、そんな我儘Aは出来ないね」
同情して貰いたかったんじゃない。
口にしたかった言葉は彼女に嫌われたくない一心で私は飲み込んでしまった。そして彼女は少し間を空けて、家に帰ってしまった
少しの後悔。少しの悲しみ。
私の人生はいつも"少しの"何かにめちゃくちゃにされていた。
だけど、この"少しの"何かに救われたことがある。
それはゾムさんと出会った日に私が彼に願った少しの救済だった
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どこまでもドア(プロフ) - 文章がとっても綺麗です。他の作品も凄く素敵で、お気に入り作者の登録を失礼させていただきました。これからも応援しています。 (2020年3月21日 2時) (レス) id: 8785b7590e (このIDを非表示/違反報告)
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