ODD【名前変換オリジナル】 (ページ4)

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男はというと、相変わらずマイペースに千鳥足を続けていた。
窓のない広い敷地は、奥に進めば進むほど暗さを増していくが、そんなことはお構い無しとでもいうように、男の足取りには何の躊躇いもない。

――暗闇は、視覚を閉ざす代わりに、人の聴覚や嗅覚に味方してくれるものなのだ。

暫くふらふらと千鳥足を続けていた男が、刹那歩みを止めた。
瞼を閉じて上を見上げる。鼻の奥まで深く空気を吸い込み、吐く。

それはまるで、自分以外の何かの気配を確かめる様な挙動だった。
しかしすぐに、耳鳴りを起こすほどの無音に耐え切れなくなった男は、わざとらしく靴裏を地面に擦り付け、己の足音で静寂をかき消すように歩いた。

男は静寂と退屈が何よりも嫌いだった。
そんな男が好きなものといえば――

そんな折、さっきまでの静けさをかき消すような、荒々しい強風が吹いた。
横からの突然の衝撃に、男は反射的に風が来た方に目を向ける。

目線の先にある壁は、大人が一人通れるほどの穴があいていて、その穴を塞ぐように、塩化ビニルの波板が被さっていた。
しかしそれは、風化した壁を修理したというよりも、誰かが故意に壁を壊し、それを隠すように(全く隠れてはいないが)波板で塞いだように見える。

波板は四方が釘で止めてあるが、左下の一本だけどこかに飛んだらしく見当たらない。
どうやら先ほどの突風は、この左下の隙間から工場内に入ってきたらしい。

途端に何かを察したように、男の目付きが変わった。
くるりと体を翻(ひるがえ)し、男は躊躇い無く壁に近付いていく。

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