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「櫻井くんは、…他の人にもそういうこと、しちゃうんです、か…?」

不安定に聞こえたその声で彼女の震えが伝わった。
ポツポツと人がいたこの図書館にもう周りは誰一人いなくて小さな彼女の声は目立ち、耳を傾ければ胸の音さえ聞こえてしまいそうだ。
あぁ、ダメだ、こういう時__俺の事で不安になっちゃう子を見る度に涙だって甘く感じてしまうくらいには気分が高揚してしまう。
力が抜けた指先は空気を掴む。
その時目の前でシャボン玉が割れる音がして薄ら薄らになってた脳が起きる。気づくと彼女は俺からあからさまに目を逸らしていた。もちろん取られた筈の眼鏡を掛け直して。

「や、やっぱ、さっきのは聞かなかったことにしてください……!」
「あっ、ちょ!どこ行くの!?」
「え、とっ、か、帰ります!!」
「ダーメ、君のお願いでも逃がさないよ」
「んぐわっ!?」

肩にかけた鞄を軽く引いて自分の方へ倒れこませるように彼女のバランスを崩した。ちょっと手荒な事しちゃったとは思ったけど自分の身で彼女を捕まえられたのだから結果オーライだ。
固く目を閉じて、睫毛を震わせながらゆっくりと再び開かせる。ピッタリ体をくっつけてるから顔を見なくたって彼女が戸惑って顔を赤くしていることが分かった。

「つーかまえた、ふふ、もう逃げられないでしょ?」

すぐにどこうとする彼女の腰に手を回してニッコリと笑ってみせる。彼女は柔らかそうな唇を軽く噛みながら俺に目を合わそうとしない。

「…ん〜?ネックレス?」

彼女のシャツの襟元からきらりと光る銀色のものが見える。細い鎖の…たぶんネックレス。なんでシャツの下?と思いながらチェーンの部分を指に引っ掛ける。震えた声でちょっと!と声をかけた彼女に宥めるようにごめんごめんと言う。
まぁ、やめないけど。と思いながらそのまま出してみるとネックレスの飾りが姿を見せる。

それは確かに見覚えがある白くて綺麗というよりは可愛らしいマーガレットで、胸が騒いだ。

「これ、俺が前あげたやつ…」
「……ずっと、身につけてたかったんです。けど校則違反だし…だから見えないようにしてて」
「そんなに気に入ってくれてたの?」
「だって好きな人からのプレゼントだったし……気に入るに決まってるじゃないですか!」

もーっっ!とすっかり沸騰した顔を抑えて言った。
隠してまで付けてるとこも、恥ずかしがってるとこも、本当は(自分で言うなもなんだけど)俺が大好きなとこも、どこもかしこも隙間なく可愛くていじわるする余裕すら無くなってしまいそうだ。

◇→←マーガレット/櫻井百瀬



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蒸田。(むしだ)(プロフ) - くっ…蛍からチョコを貰いたい人生だった… (2019年2月17日 7時) (レス) id: f91a58f64c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花言葉企画参加者一同 x他1人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2019年2月14日 22時

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