chapter:34 ページ35
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えいちゃん。
その言葉を聞いて、一気にドキッとする。
「準備…撮影するの?」
少しずつ大きくなる鼓動を抑えつけながら、冷静に返事をする。
『うん、今から2本だけ。ごめんね。まぁ、これからもまた前みたいに付き合いしてよ』
「こちらこそ、ね。じゃあ、ご迷惑みたいだしこの辺で…」
『あぁ…じゃあ。』
「うん、じゃあね」
プツッ。
何となく緊張して部屋をぐるぐる周りながら電話していた私は、ソファーに座る。
数日間ずっと気にしていたことがようやく解決でき、何だかどっと疲れた。
今日は早めに寝よう。そう決めて、お風呂を沸かしに浴室へ向かった。
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昨日は11時頃に寝たからか、7時のアラームでいつもよりスッキリと起きられた。学校に向かう準備もスムーズに終えて、いつもより1本早い電車に乗る。1本早いだけで人の混み具合が全然違うからなぁ。
かと言って学校は昼からなので駅前のカフェに入り、時間を潰す。課題も家より落ち着いて出来るから私はこのカフェが好きで、いつも座る席も決めていた。今日もそこに…と思ったけど先客がいたようで、隣の席に座る。お水を持ってきた店員さん越しに見えた隣の席の人…それは黒いフードを被ったえいちゃんだった。
「あ、ありがとうございますっ…」
ついお水を受け取る時の声が上擦ってしまい、店員さんに変な目で見られた。えいちゃんはイヤホンをしたままパソコンをじっと見つめているので、気付いていないらしい。つい話しかけたくなるが、昨日のそらとの会話を思い出す。
「話しかけない方がいいよね…」
メニューを見ながら他の誰にも気付かれないようにそっと呟く。ホットサンドでも食べようかと思い、店員さんを呼んだ。
「すみませーん」
思ったよりも大きな声が出てしまって少し恥ずかしい。忙しいのか少々お待ちください、と言われてしまった。
と、その時。隣の黒い頭がゆっくりと動いて、長い前髪に隠れた目が私の顔を捉えた。途端に見開かれる目と私の目が暫く合い続けた。
「あ...久しぶり」
気まずい状況を何とかしようと、控えめにそう声をかけてみる。
「久しぶりだね...」
でも、上手く会話は続かなくてすぐに沈黙が訪れた。
「お待たせ致しました、ご注文をどうぞ」
そんな私たちの間に店員さんが入る。タイミングがいいのか悪いのか。
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エイカ - お話の感想ではないことを書き込んでしまいすみません…。 (2018年3月28日 18時) (レス) id: 7eb5523693 (このIDを非表示/違反報告)
エイカ - お久しぶりです!今回のお話もとてもよかったです!えいちゃんと夢主ちゃんが会ってとても嬉しいです!笑続きがとても気になります…!更新頑張ってください!話が変わりますが3/25にファンミに行きました!初めて近くでアバンティーズを見れてとても嬉しかったです♪ (2018年3月28日 18時) (レス) id: 7eb5523693 (このIDを非表示/違反報告)
雨城(プロフ) - とんでもないです!そして、ありがとうございます。エイジさんをたくさん登場させたいと思いながらも字数制限に負け、あまり書けなくて…たくさん登場させられるように頑張ります! (2018年2月6日 9時) (レス) id: e39777545c (このIDを非表示/違反報告)
エイカ - 雨城さん» アドバイスありがとうございます。あと、今回のお話もとても面白かったです。今までえいちゃんがあまり出てこなかったので楽しく読まさせていただきました。 (2018年2月5日 19時) (レス) id: 7eb5523693 (このIDを非表示/違反報告)
雨城(プロフ) - エイカさん» 字数制限があるので、あまり詳しいアドバイスができずすみません。私でよければいつでも質問していただければ答えさせていただきます。エイカさんもお話の更新、頑張ってください! (2018年1月17日 0時) (レス) id: e39777545c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨城 | 作成日時:2017年12月19日 23時