交わらない平行線

chapter:33 ページ34

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ブー、ブー、とガラスの机で振動する端末が音を立てる。大袈裟に肩をびくつかせた私は、小さく息を吐いてからそれを手に取る。
相手は誰かなんて見なくてもわかる。


「はい、もしもし」

『ごめんね、今大丈夫？』


予想していた、けれどいつもより少し堅いそらの声が耳に入ってくる。その声に釣られて、何だか緊張が増す。


「全然大丈夫だよ。私こそ、ごめん…」

『大丈夫ならよかった。まず…暫く連絡出来なかったことだけど』

うん、と小さく相槌を打ちながらそらの話を聞いていく。


『俺らが付き合ってる付き合ってないに関わらず、騒がせちゃったことは事実、でしょ』

『だから、少し落ち着くまでは一応会ったり連絡しないように言われてて。それで返せてなかった…ごめん。』


「そういうことだったんだ…こっちこそ、本当にたくさん…迷惑かけて、ごめん。ずっと謝りたかったんだよ」

『Aのせいじゃないよ。Aは気にしなくていいから』

「でも…」

『一般人のAを巻き込むわけにはいかない。まぁ、俺もファンだって子はいてくれるものの芸能人とかじゃないけど』


端末の向こうで軽く笑うそらに釣られて、私もふふ、と少し笑みを漏らす。


『まぁでも、幸い早いうちに誤解も解けたし落ち着いたし。気を付けるように、とは言われてるけどかえって相手…Aのことね。も心配してるだろうし連絡は取っても大丈夫って言われたから。多分、他のメンバーからも返ってくるんじゃないかな』

「そっか…よかった」

掛けてきた直後よりかなり柔らかくなったそらの声色に安心しながら、1つ聞いてみる。


「連絡はいいって言われたらしいけど、これからも会うのはやめた方がいい、ってことだよね…？」

『あー、いや…前みたいに外にご飯食べに行くのは難しくても、家には偶に遊びに来てよ。俺も、きっとみんなも会いたいだろうし』

「本当に？それなら嬉しいな。せっかくまた仲良く出来たから、これで会えなくなるのは寂しいと思ってて」

『俺も俺も。友人関係まで壊されてたまるか！って思ってた』


いつの間にかいつもの調子に戻ったそらと、いつもの調子で話せるようになっていた。


『ほんとにさー、あ…ごめん。』

「ん？」

『ううん、Aじゃない。えいちゃんがさ、そろそろ準備って』


えいちゃん。
その言葉を聞いて、一気にドキッとする。


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