44協力的な ページ45
ピー、ピピピッ、ピー、ピピピッ
来客を示す合図が鳴っている。流は一つしかない屋上への入り口にカメラを構えた。金属製の扉が開いた先には中原 京雅が立っている。
「……俺は撮んなっつったよなァ?」
「ごめん、癖でさ。」
謝りつつも流は右手人差し指でボタンを押した。独特の音を立ててカメラがシャッターを切る。
「最期なんだから数少ない友人の写真を撮る事位許してよ。僕の遺体からカメラのデータ盗れば良いだけでしょう?」
中原は少し驚いた。彼の足元に落ちているそれなりな厚みの茶封筒を指差して流は「京雅の組織について書いてあったんだ」と言う。彼は送り主の名が書いていないそれがAから送られた物だと気づいていたが、彼の名は出さなかった。京雅の正体を知った今、下手に名を出すのは得策では無いという判断の末の行動だ。まぁ封筒に書いてある『空見 流様へ』が明らかに江口 Aの文字であると中原はわかっていたのだけれど。
「分かってんなら話が早ェ。クスリを出せ。今更言い逃れは出来ねぇぞ。」
脅しの時に使うドスの効いた声音で言う。流は可笑しそうに目尻を下げて笑い声をたてた。
「しないよ、言い逃れなんて。これ、今持ってる分全部ね」
まるで以前から約束していた漫画を貸す様な気軽さだ。密封パックの中に入った色鮮やかなラムネの様な10粒の錠剤、それが10袋。慣れた手つきで制服の内ポケットから取り出して中原へ投げる。それは捕らえた奴等が持っていた物と同じだった。動かぬ証拠。袋の一つにホチキスで留められている紙を見て、流は言った。
「僕が知ってる限りのお客さんの名簿だから。使うなら使って。ーーーああ、雨雲が近づいてる、やるなら早くしないと風邪引くよ?」
「………」
煽るのか茶化すのか、微妙な言葉を無視して中原は手入れの行き届いたジャックナイフを取り出した。
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悠誠(プロフ) - コメント下さると嬉しいです!リクエスト等ありましたらお申し付け下さるととっても喜びます!! (2016年10月4日 15時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 再開します! (2016年8月16日 16時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - なんか更新出来ました (2016年8月14日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 帰省の為Wi-Fiが繋げないので更新が16日まで出来ません。申し訳御座いません (2016年8月13日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 中原さんを軽率にオバケ苦手キャラにしてしまった……なんか体術が得意な人って物理攻撃効かない物(代表:幽霊)に苦手意識ある気がしませんか?国木田さんもそうですけど。(社長はその後光で幽霊さん浄化される。(確信)) (2016年8月8日 19時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠誠 | 作成日時:2016年6月26日 19時