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29来客と空の色 ページ30

定位置に戻り、スミャホで来客の確認をする。今日用意しているクスリはあと一人分だけだ。大人数で来られると困るんだよね、という心配は杞憂だった。
画面に映る、学生帽の(小さな)男子生徒。

「京雅!」

嬉しげな流は当然京雅の本名も、彼の任務も、所属している組織の事も知らない。

ガチャリ。扉が開く。

「ナガル!!」

自分の名を呼ぶ独特の声はいつもより何処か余裕が無い。流は上層からひょこりと顔を出した。

「何?」

びくん、とらしくもなく震える京雅。何やら只事では無さそうである。

「…どうしたの?」

「あ、あぁ、其処か……手前は……その、ナナフシギに会った事あるか?」

「え」

思わず、小さく声が漏れた。

ーー校庭とか、学校周りの道に五千円札が落ちてても、絶対に風上を見ちゃダメなんだって。ーー

ーー風上には絶対にウチの高校の屋上があってね、そこに立つ人影と目が合うと呪われる、って先輩が言ってた!!ーー

登校中に前を歩く女子生徒達が話しているのを聞き、人払いが目的の噂がちゃんと機能しているのを確認したのは今朝の事だ。
しかし、嗚呼。彼にもあの話は伝わっていたらしい。

「あ、いや、先刻江口が六つ目に話してたのが屋上の話で、昼でも出やがるっつーから、その七不思議の真否を確かめて、」

自分が恐怖しているのを誤魔化すかの様に、京雅はぺらぺらと聞いてもいない事を喋りまくる。
江口。Aももうあの話を知っていると言うのか。そう言えば近頃Aが此処に来なくなった気がする。嗚呼何という事だ。他人払いのつもりだったのに。友を払ってしまっては何の意味も為さない。

「出くわして無かったらいいんだ!!つか出来たら会ってて欲しくねェし、その」

「大丈夫だよ。」

大丈夫という言葉に反応して、中原は顔を上げる。砂色の空と黒い雲を背景に立つナガルが、笑っていた。

「ほ……本当か?」

「うん。……と言うか、それ僕が流した話なんだ。空の撮影、邪魔されたくないからさ。」

「はぁ!?手前、こっーーーあ゛ぁっ!!!」

作り話にあれだけ狼狽えた自分が心底恥ずかしいらしい、石に八つ当たりする京雅。石はフェンスを越えて、遥か下へと落ちていく。Aが来てたらきっと羞恥心にトドメ刺すんだろうなぁ、と流は苦笑いを零した。

30「邪魔」→←28屋上にて



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悠誠(プロフ) - コメント下さると嬉しいです!リクエスト等ありましたらお申し付け下さるととっても喜びます!! (2016年10月4日 15時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 再開します! (2016年8月16日 16時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - なんか更新出来ました (2016年8月14日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 帰省の為Wi-Fiが繋げないので更新が16日まで出来ません。申し訳御座いません (2016年8月13日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 中原さんを軽率にオバケ苦手キャラにしてしまった……なんか体術が得意な人って物理攻撃効かない物(代表:幽霊)に苦手意識ある気がしませんか?国木田さんもそうですけど。(社長はその後光で幽霊さん浄化される。(確信)) (2016年8月8日 19時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:悠誠 | 作成日時:2016年6月26日 19時

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