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2今日のモチーフ ページ3

2年 D組 5番 江口A


最初の空欄を埋めて、彼は思考を始めた。時間は3分。全20問。読み慣れた漢字の熟語の虫食いを埋めるだけの簡単な作業だ。

及第点、辻占…玄関、趣味。

与えられた時間の二分の一足らずで其れを終えた彼は、カンニングと言われぬ程度にぼんやりと窓を眺める。

その窓から見えるのは、校庭ではない。

否、校庭は窓の外の2階分下にあるのだ。ソフトボールだろうか、カキーンだの走れー!だの五月蝿く聞こえているのだが、しかし、Aが見ているのはそれでは無くて。

窓に映ったクラスメイト達である。

先生にバレぬ様に角度を微調整しながら消しゴムかすを斜め二席前の友人に当てようとする男子生徒。他は皆大人しく小さな紙に回答を記入しているが、消しゴムかすの軌道の真下に居る二人は額に若干青筋を浮かべた。関係の無い、…消しゴムかすの被害に遭っていない女生徒も呆れた様に眉をひそめる。


今日は、あいつだな。


制限時間の秒読みを始めた現代文教師、その声が教室に響くと共にカリカリと鳴っていたシャーペンの音が速度を上げた。

ゼロ、そのカウントと共に教室に呼吸が戻る。授業終了の鐘も程なくして鳴り、其処は一気に緊張から解放され歓談の雰囲気に塗り変わった。

始まる40分間の昼休み。Aは手早く弁当を食い、席を立つ。


向かうは図書室の奥の奥、現在使われていない鍵のかけられた古書倉庫。彼は其処に針金を差し込み、静かに中に入った。

床を埋め尽くす様に散らばっているのは原稿用紙。百枚以上はあるだろうか。彼は其れを一瞥し、部屋の中心に置かれた椅子に座る。

「題名は後で考えるか……」

傍らのヒビが入った戸棚から一枚白紙の原稿用紙と万年筆を取り出す。1行と2行目の下を2マス空けて、書くのはカタカナ3文字でシ、エ、ロ。まるで溜めていた課題を終わらせるかの様にスラスラと、彼はそれを書き始めた。

3在り来たりな→←1事の発端



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悠誠(プロフ) - コメント下さると嬉しいです!リクエスト等ありましたらお申し付け下さるととっても喜びます!! (2016年10月4日 15時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 再開します! (2016年8月16日 16時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - なんか更新出来ました (2016年8月14日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 帰省の為Wi-Fiが繋げないので更新が16日まで出来ません。申し訳御座いません (2016年8月13日 8時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)
悠誠(プロフ) - 中原さんを軽率にオバケ苦手キャラにしてしまった……なんか体術が得意な人って物理攻撃効かない物(代表:幽霊)に苦手意識ある気がしませんか?国木田さんもそうですけど。(社長はその後光で幽霊さん浄化される。(確信)) (2016年8月8日 19時) (レス) id: d7a17771ca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:悠誠 | 作成日時:2016年6月26日 19時

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