夏のてんごう【夏油傑】

18話 ページ18

繁忙期も少し落ち着いてきた頃。



自分から言った手前、ちゃんと夏油に自分から会いに行こうと、忙しい合間を縫ってはタイミングを探してるんだけどうまくいかない。
お互い忙しかったから当たり前は当たり前なんだけど。



真希はあれから自分で手合わせを頼んだようで、予想通り夏油も快諾したらしい。



「すまない、このあと真希ちゃんと手合わせの約束があって」



と断られることもしばしば。


…いや、いいじゃん。
大事な友達の悩み解決の手助けが出来たんだから。

それで私も真希と切磋琢磨してまた強くなれるなら本望だ。


と理性は働くのに、モヤモヤは一向に晴れる気配がない。




・
・
・




「A」



聞き慣れた呼び声に振り返る
…と言っても
久々に夏油に声をかけられた気がする




「おつー
どした？」




「いや、久しぶりに見かけたからさ」


特に用はないんだ

なんて言って、相変わらず胡散臭い笑みを浮かべる夏油

少し頬が熱くなるも平常心だ平常心



今日の任務は終わって、帰ってきて自販機の前でダラダラしてた私の横に夏油が座る

夏油も今日の任務が終わったところらしい

少し疲れたように隣に腰を降ろした



「お疲れなようで」



何気なく発した言葉に少し夏油が驚いた



「本当、君の洞察力には驚かされるな」


「特級でも繁忙期は大変かな？」


なんて茶化すと、昔も君に似たようなこと言われたな
なんて笑う夏油



うん、平和だ。
平和な日常。友達との些細な会話。

それでいいじゃないか。
私は充分幸せだ




「真希の手解きは順調？」




そんな気持ちとは裏腹に、気になってたことが口をついて出てしまった。



「まぁね。
体術だけでいえばAより筋がいいしね」



なんて負けず嫌いの私を茶化し返してくる夏油にチクりと胸が痛む。

夏油は学生だった頃はモテてる印象だったけど、大人夏油はいかんせん女っ気がない。

どこかそれに安心していたんだ。


真希という、夏油の中に私と比べる対象の女の子ができたことが気に入らないんだな。
なんて頭は冷静なのに、心はずっともやもやしている。

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