9話 ページ9
「ごめん、そうとも知らずに…」
そうとも知らず、忘れられてることにイライラしてしまった自分が恥ずかしい。
明日には記憶をなくしていると分かってて眠りにつくのはどんだけ恐ろしいことだろうか。
「はは、何あなたが泣きそうになってんですか。
私はね、嬉しかったんです。」
僕の顔を見て楽しそうに続けるA
「来月のために、絵日記つけてるんですよ。昔から。
それを読んだ限りじゃ、私は交友関係ゼロなんです。
そりゃそうでしょう？毎月毎月、『誰？』なんて言う友達嫌でしょうし。
仮にそれを受け入れてくれる友達がいたとしても、私が嫌です。
そんなにいい人を忘れてしまう自分が許せない。
友達になる前に自分から距離を置いてみたいですね、日記をみるに。
きっとあなたから離れた理由もそれだと思います。
その節はすみません。
それなのに、あなたは覚えてないという私に怒りながらも離れていかないでくれた唯一の人だった。
私の日記という名の記憶には、誰一人そんな人はいなかったんですよ。
…まあ今月読んだ分の日記にはですが。
だから、ありがとう。」
満面の笑みで、本当に幸せそうにそう言う彼女に
僕はまた苦しい表情しかできない。
こんな些細なことでここまで幸せそうに笑うAに
笑顔なんて返せるわけがなかった。
「ねぇ、だから
そんな泣きそうな顔しないでくださいよ
んな顔されたら、せっかく我慢してんのに、泣きたくなっちゃうじゃん…」
笑ったままホロリと涙が零れるAを
考えるより先に抱きしめていた。
糸が切れたのか、俺の腕の中で泣きじゃくり始めるA
「私はっ…！
天与呪縛なんて、要らなかった！
術式だって要らなかった！
ただの…ただの人でいいから、
覚えておきたいことを覚えてて、忘れたいことを忘れちゃう、
そんな…、そんなただの人になりたかったのに…！」
さっきの話を聞く限り誰にも言ったことのない心の内であろうそれを吐き出すAにうん、うん、と相槌をうちながら抱きしめる。
5年前、なんで僕は気づいてやれなかったんだろう。
あんなにも近くにいて、こんなにも辛いものを抱えていた好きな人のことを何も知らなかった。
気づいた所でどうしようもないのかもしれないけど、
ただただ、ごめんと思いながら泣きじゃくるAを抱きしめた。
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ameyo(プロフ) - 読んでいて涙がポツポツと。。お体に気をつけて、更新楽しみにしてます(^^) (2021年10月6日 1時) (
レス) @page21 id: 9a4641eaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ぬし(プロフ) - プスメラウィッチさん» 一応五条オチのパッピーエンドで考えてます！頑張ります！ (2021年9月20日 8時) (レス) id: 41dab58f13 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - ぬしさん初めまして、この小説は五条悟オチですか？できれば五条悟オチでお願い出来ますか？五条悟と夢主ちゃんはいつ付き合うのですか？続き頑張ってください。応援しています。 (2021年9月15日 21時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
ぬし(プロフ) - ろさん» やったー！ありがとうございます！ (2021年9月15日 20時) (レス) id: 41dab58f13 (このIDを非表示/違反報告)
ろ(プロフ) - 好きです (2021年9月15日 1時) (レス) id: f997d79847 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぬし | 作成日時：2021年9月14日 6時
