私の呪い。【五条悟】

五条悟の憂慮5 ページ40

「んー、Aのせいだね」


正直に言うとAはつまんないの、と言って残っていた最後のお酒を飲み干した。

テーブルの上にはもう何もない。
近くの店員さんにお会計をお願いすると、かしこまりましたと言ってレジに向かってくれる。


「Aのせいだからさ、責任とってもらおうかな」


「…なにが？」


脈絡もくそもないのは自分でもわかってる。

店員さんが伝票を持って来てくれたのでそのままカードを渡した。
Aが「ありがとう、次は私が奢りますね」と言う。別にいいよ、と言うと怒るので「うん」とだけ。

店員さんが再びレジに戻った所でさっきの話に戻る



「今日一緒に寝ようか。
…もちろんそーゆー(・・・・)意味で。」


そう言うとAは時が止まったみたいに
元々大きな目を更に開いてまん丸にして固まった。
顔はすでに赤いからわからないけど、きっと酔ってなくても真っ赤だ。


付き合ってしばらく経って、Aの部屋には何度も行ってるけど本当にただ一緒に眠るだけ。一度も手は出してない。

だからAが驚くのも無理はないけど。


ガタッとおもむろに立ち上がると


「ちょ、あの、えと
会計待ってるうちにお手洗い行ってくる！」


時折左右に揺れながらパタパタとトイレの方に消えていってしまった。




…ふむ。

「早かったかな」


いや充分。充分すぎるほど大事にする期間というのは我慢したはずだけど。

今日は残念賞の添い寝かな。
なんて考えていると


「カードのお返しです」

店員さんが来てくれたが二人いる。
そしてカードを受け取っても戻らない。
なぜか、なんて大体予想はつく。


「お連れの方は彼女さんですか？」

「うん、そうだよ」


あー、やっぱり！
と残念そうな、でもキャーっと2人で盛り上がる店員


「お写真だけでも一緒に撮ってもらえませんか？」


ちゃんと弁えてるみたいだけど、これはいいのかな？

考えてみるけど、Aは気にもしないか。接客も良かったし、チップ代わりってことでいいかな。

と結論に至る。


「い──」

「だめ」


立ち上がって、いいよ、と言おうとしたら
トイレから戻ってきたAが俺の腕をとって返事を遮った。


「A？」

「だめだよ」


そのまま俺の腕を引いて入り口まで行くと
ちゃんと店員さんにご馳走さまでした、といって出るA

店員さんの気分悪くしちゃったかなと思いきや
これはこれで、ドラマみたい！と盛り上がっているので僕もご馳走さまを言ってAに続いた。

五条悟の憂慮6→←五条悟の憂慮4

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す