私の呪い。【五条悟】

35話 ページ35

帰り道。
散々ストレートに口説かれて私は限界だ。

お酒は結局2杯しか飲んでないのに、顔の火照りは収まらない。


「今日やけにかっ飛ばしてたじゃないですか」


何が、とは言わない。というか言えない。
そんな自惚れ発言、それが合ってるとしても自分から言えるわけもなく。


「うん。初めてデートできた訳だし。」


何の気なしにスラリとそんな台詞が返ってきて、私の顔は更に熱くなる。


「…チャラ男発言」


照れ隠しにそう言うと、五条さんの足がピタリと止まった。


「五条さん？」


隣を歩いてた人が急に止まったものだから振り返ってみると、少し怒ったような、不機嫌な顔をしていた。


「俺、今日テーブルに肘ついてないよ」

「へ？」

「Aが肘つく人嫌いって言ってたから」


唐突にそんな事言われる。
なんか前にそんな事言ったっけか。


「そんなことよく覚えて…」

「それに。触れるのも辞めた」


言葉を遮られる。
割とガチめに怒ってる？


「次触れたら嫌いになるって言われたから。
…腕とれた時は触っちゃったけど。


あと。本当は呪い解くの嫌だったんだ。
Aとの関わり減っちゃうし。
だからお金稼ぐって術師続けてくれて嬉しかった。


偶然会った風にしてたけどさ。
時間ができる度に休憩所行って、Aにばったり会えないかなって思ってた。


水曜日に店に良く来るサラリーマン、俺嫌いなんだ。
多分アイツAのこと好きだし。だから平日は店閉めるって高専来てくれて嬉しかった。


あと照れた時、左に顔反らすの癖だよね。
眠い時、ふんふん鼻歌歌うのも。気づいてた？
右耳の裏にほくろあるのも知らないでしょ。」


そこまで言うと歩いてきてぐいと顔を近づけてくる。



「これでもまだチャラ男なの？
もっと聞く？」


「いや…充分、です。」



ぷしゅー、と湯気が出てるんじゃないかってくらい顔が熱い。
めちゃめちゃ私のこと好きじゃん。




「…それで。
俺はAのこと好きなんだけど。

Aは？」



ジト目で、ちょっと照れながら聞かれる。

そんなの、もう、決まってる。


「…私も五条悟が、好きです、よ」


照れ臭くて、目を合わせずにそう言うと
ほら、左に顔そらした、と笑われる。


「はは、やったね。
フルネームでご指名だ」



そう言って無邪気に喜ぶ五条さんに私も頬が緩む



「今日のこの日ためだって思ったら
呪いも悪くなかったんじゃない？」



「8年前から私のこと振り回してた人が
よく言うわ」


そう言って、お互い意地悪く笑った。



───私の呪い。 完───

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