五夜 ページ7
『お、クロ、見てみな。蝶だよ』
ひらひらと優雅に私の周りをくるくると舞う、一匹の白色の蝶。
もとから野良として生活しているなら、さほど珍しいものではないのだろう。クロは蝶に飛びつくことも無くじっとそれを見ている。
蝶は暫く飛んだ後、リュックに下げていたあのお守りに止まる。また飛んだと思えば、私達を先導するようにずっと行き先を飛んでいる。
試しに歩みを止めてみれば、その蝶はぴたりと止まって再度お守りに止まるのだ。
『……道案内してくれてるのかもね。甘えさせてもらおうか、クロ』
クロに話しかけて、蝶の案内する先に進む。
地図を読むのは苦ではないが、手間は省ける。
歩くこと10分、道祖神が見え、すぐに鳥居も見えた。
鳥居をくぐる前に一礼し、ちゃんと真ん中を避けて石階段を上っていく。
蝶は、まるで自我を持っているようにまたお守りに止まる。
参道わきの手水舎で自身の手とクロの足を洗い、参詣する。
『クロ、隣おいで』
古ぼけた、けれども大きな神社が落ち葉を被りながらも、そこにあった。
クロを呼んで、二礼二拍して、鐘を鳴らす。
本当は神様にお願いごとをする場ではないのだが、少しここで我儘を言わせてもらう。
早く、こんな生活が終わりますように。
そして、もう一礼。
礼が終わると、蝶が飛び、境内の方へ飛んで行ってしまう。
ここまで案内するなんて随分と利口な蝶だった。とてもそこらへんにいる様なのとは違う雰囲気から、ポツリと呟く。
『神様の遣い、だったりしてね。』
そう行った途端に、ドタバタと急ぐ様な足音が聞こえてくる。
私とクロ、蝶以外の参拝者(?)はいないし、もちろん、私達のものではない。
すると、スパァン!と境内の襖が勢いよく開く。
出てきたのは男性。左目を隠すほど長い金髪をハーフバックにして、眼鏡の奥には紅い眼がじっと私に向けられる。
黒や灰色でまとめられた着物は、何故か上半身には身に付けられていなくて、思わず体が固まる。
『……』
?「……」
あまりの驚きから、沈黙が流れる。
なんだ、おばあちゃん、あんなこと言ってたけど神主さんいるんじゃん。
驚きが一周回って、変に冷静になる。
その人は目を見張り、境内から私の前に下りてくる。
ただ、人見知り故に男性耐性のない自分は上半身裸の男性から逃げるように数歩後ろに下がるが、その人にガッと両手を掴まれる。
?「A!!やっとか、待ちくたびれたゾ!」
『……いや、誰ですか!?』
ラッキーカラー
あずきいろ
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心持ち - 続きが気になります!更新頑張って下さい!! (2020年7月14日 19時) (レス) id: 6c4e6d0421 (このIDを非表示/違反報告)
みいこ - 続きが気になります〜!!応援するので頑張ってください! (2019年2月17日 18時) (レス) id: 453fe277c2 (このIDを非表示/違反報告)
ペストさん(プロフ) - もものすさん» 狂愛大好きなんで……!あまり言うとネタバレするんですけど、私が作者ということで察して下さい() (2019年1月21日 17時) (レス) id: 6ba271420a (このIDを非表示/違反報告)
ペストさん(プロフ) - イムさんさん» ああありがとうございます!お兄さん達、もうちょいで出てくるんで待っててください! (2019年1月21日 17時) (レス) id: 6ba271420a (このIDを非表示/違反報告)
もものす - 狂愛なんですね…まだ平和()前々作最後まで見たことあったけどどろどろだったからこれもどろどろになるんですかね? (2019年1月21日 16時) (レス) id: 7ecc545104 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ペストさん | 作成日時:2019年1月20日 21時