【月刊少女野崎くん】気の利く女子高生は、修正担当アシでした。４

第１５１号 危うい隠し事2 ページ36

「まあねえ、私も漫画家だし、読者のイメージを壊すなんてことはしたくないのよ」

あんたが言うか。私一回夢壊されてるんだぞ。

「でも、夢野先生は文字通り夢を咲かせる人だから……いい人だとは思うのよ」

野崎梅太郎って字面ですが。

「でも、軽々しく親のネームバリューなんか使うもんじゃないわよ」

……何言ってるのこの人。


「……どういうこと？」

「え？だって、あんたきっと小田原絵の娘ですーって、ファンレターかなんか送ったんじゃないの？やめてよ恥ずかしい」

「…………」

「ファンレターを送るのは、別に悪いことじゃあないのよ。でもね、一般人としてさりげなく送る方がいいわよ。もちろん、夢野先生はいい人だから信じてご丁寧にしてくれたんだろうけど」


「…………」

「ん？どうしたの、A」


…………よ、


よかったああああああああああ!!!!

勘違いしてくれて良かった!!信じやすい母親で良かったあああ!!


「なに、急にどうしたの」

「お母さん……っ！ありがとう、ありがとうっ…………！」

「はあ？」

目を覆って肩を震わせる娘に、訳がわからないけどとりあえずなんかあったのだろう、と母は諦めて納得する。そんな構図。

あ、本当に泣きそう。

でもこれでもう安泰だ……。

しかし、野崎には言っとかないと。都先生は上手くやってくれそう(期待)だけど、あいつボロ出そうだから。


「あ、でも」

「どうしたの？」

「……何で急に笑顔になるのよ。いやね、漫画家だからってあんまり夢を見過ぎないことよって、一応忠告みたいな」

あんたが言うか(二回目)。

けど、私の心はさっきよりも穏やかにそれを受け止めることができる。偉大だ。

「まっさかあ、こんな身近に例がいたらそんな夢見ませんってもおやだあ」

「Aあんたぶっとばすわよ」

「いや、あの、冗談ですちょっと机机」

机がガタガタ震えている。一体見えないところでどんなことが行われているのか……考えたくもない。我が妹よ早く帰ってこい。

「冗談ですよおこんな素敵な漫画家他にいないじゃないですかあ、ねえ？」

「わかったんならそれでよし」

机のガタガタは止む。そっとため息をついて、まあ、と内心で思う。


……何も小田原絵先生のことじゃあないんですけど、ねっ!!


というわけで、今夜も小田原家の食卓は平和でした。うそ！

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