第148号 作家と読者と3 ページ32
「なんていうか、あんまり……まだ、自分の親が漫画家っていう自覚というか、意識がないんですよ。本当、まだ?って感じなんですけど」
「そういうものかしらね」
「少なくとも、私にとっては」
そう言ってみると、そっか、と都先生は目を細める。いや、うん、ネタ採集してるときの野崎と同じオーラが、びみょーに出てます先生。
「あくまでも、親と娘で作家と読者なのかなあって……あ、すいません、こんな話」
「ううん、全然いいよ。Aさんと話してると、なんだか不思議な気分になるの」
「……ふしぎ……?」
首を傾げると先生も、うまく言えないんだけど、と首をすくめる。
自分では、そんな変な空気出してる自覚ないんだけど……待って、どうしてそこで変な空気とか言い始めるのよ私。
都先生は生クリームとスポンジを一切れ口にすると、急に真剣な顔つきになった。
「ここからは冗談じゃないのだけど……Aさん、うちにアシスタントに来ない?」
「あっ、へえ、アシスタントに……それは誠に光栄で…………え?」
唐突すぎて思考はぴょーんと明後日の方向へ旅して戻ってきたようだ。信じられなくて、ぽかんと口を開ける。
「野崎くんに、Aさんの仕事が終わった原稿を見せて貰ったことがあるんだけどね。千代ちゃんのベタ塗りと御子柴くんのお花もさながら、Aさんの修正技術も凄かったわ」
「でっ、でもっ、どこを修正したのかなんてわかりっこないじゃないですか……」
「そんなことなかったのよ。野崎くん、修正前のコピーも持ってたの」
そんなコピー毎回取っておけ。いや、どうして……どうしてこうなるの……。
心がゆらゆら揺れつつも、いいえいえいえと首を振る。受けるわけにはいかないのだ。
「光栄すぎて光栄なんですけど、すみません、辞退させて頂きますごめんなさい」
「あら、残念。理由は?」
「ええと……ま、まず、都先生のところはプロのアシスタントさんがいらっしゃるでしょう?さすがに、私はそんな大層な職場に紛れ込めません」
「Aさんっておもしろい言葉の使い方するよね」
「あ、ありがとうございます……ほかにも色々ありますけど……えっと……」
修正だけなら、原稿を貰って別の場所でできる。でもそうじゃない。ありがたいけど、嬉しいけど、そうじゃないって思うのだ。
「大きく、二つ。一つは、私親にこのことは内緒にしてるんです」
そう告白すると、意外そうに目を瞬かせる都先生。
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スマトラ島のラフレシア - マカさん» ええまったく本当にそうですよね。爆ぜろという思いはきっと私も同じです←感動だなんて大げさですよ!むしろ戴くコメントに感動して打ち震えております。素敵な質問に続いて、コメントありがとうございました!無自覚?ええそうですとも!! (2015年8月13日 19時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
マカ(プロフ) - ふぉぉぉぉぁぁぁぁ!お疲れ様です!ラフレシアs!感動をありがとう!無自覚リア充すえながく爆発しててください!!←切実 (2015年8月13日 16時) (レス) id: 66f2c32cb1 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア - 杜爽さん» ありがとうございます……!(レスは間違いでしょうか?)応援いただけると頑張れる気がします!!沢山の褒め言葉を戴けて、ちょっと照れますよ!ありがとうございます。これからも面白いと言っていただけるような作品をお届け出来るよう精進して参ります!! (2015年8月11日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
杜爽 - 実紗封さん» 作者様!このシリーズ(?)とっても面白かったし、内容がとにかく素晴らしくて、これで終わってしまうのがすごくもったいないな~と感じてしまいました。゚(゚´Д`゚)゚。今までとても楽しく読ませていただきました!これからも応援してます!!そして頑張ってください (2015年8月11日 16時) (レス) id: 6baf7ec6df (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア - 実紗封さん» うわあああ質問ありがとうございます!!難しい問題ですね……笑 解答はしばしお待ちください! (2015年7月10日 17時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2015年6月19日 21時